光の教団 de 舞いし邪悪を阻むは正義

 教団の廊下は堅牢な素材で出来ていて細く、迷路のように入り組んでいた。
 曲がり角に差し掛かると俺は、まるで飛び石でも渡るかのように軽々と飛ぶ。同時に流れるように腕を引き絞り、イオナズンクラスの爆薬を仕込んだ円筒を括りつけた矢を曲がり角の先へ放つ。ひゅんと音を耳が掠める間に、目の前に迫った壁を蹴り空中一回転。天地逆さまの視界で拳銃の銃弾を放ち、そのまま踏み切った位置に着地する。
 瞬間。
 目の前から赤い爆風が、熱風とともに押し寄せて来た。粉々になったゾンビや魔物の一部が砕けた瓦礫のように、床を跳ねて転がる。硝煙の匂い、爆薬の匂い、生を奪われ死体となる匂い、死の匂い。懐かしい戦場の匂いだ。
 俺は美味くはないが、懐かしい味を吸い込んで背後を見遣った。
 公安十課、特殊能力犯罪対策室の課長であるフーガと、その部下のスランが俺を見ていた。
 フーガは疲労でも感じているのかと思うような表情だが、まだ俺はこいつを前線に立たせちゃいない。もともと、そういう顔つきなんだろう。
 その横に立っているスランは、露骨なまでに表情を強張らせていた。あまり怖がらせるつもりは無いが、敵対したらどうなるか、想像でもしていたんだろう。紹介所の面子はどれも際物揃いだが、能力を持っていない俺ですら例外ではない。警察や軍を相手取れば、それぞれが単体で壊滅に追い込める程の実力者だ。
「どうした? もう直き、目的地だろう?」
 俺は矢が納まっているゴルフバッグを担ぎ直し、先を歩き出した。課長さんは冷静過ぎるのか足が遅いし、スランは狙撃に重きを置いているらしくて前には出て来ない。まぁ、俺が先走った方が、面倒が無くていい。
 俺達は光の教団の教祖を追っていた。
 SICURAがナビゲーションは、リアルタイムで仲間の戦闘状況や敵の位置情報まで網羅する。先日、SICURAとその制作者が世界中にある全ての教団の情報を破壊し、システムを崩壊させた。しかし、この総本山の防犯カメラのシステムだけは生かしたそうだ。それはSICURAが目に使う為。教団の内部の映像データと、俺達が持っている携帯電話の映像とを照合し、教団の戦場の状況を表示させていた。
 俺達が追っている教団の教祖 イブールは、儀式を妨害したテング達の元から逃げ、聖職者三人組から見逃されて一番奥の部屋へ逃げ込もうとしているようだ。
 一番奥の部屋はSICURAのハッキングでも明らかにならない、巨大な空白区域の奥にある。隠し通路があるのだろうが、情報が少な過ぎるし探す時間も惜しい。課長さんは正面から空白区域を抜ける事を選択した。
 そして空白区域の入り口に巨大な扉の前で俺達は足を止める。照明が無く闇に飲み込まれた天井に向かって、扉が巨大な壁のようにそそり立っている。開閉させるべきレバーもなく、まるで巨大な金属の板を立てかけたような扉。つかみ所が無い上に、どうみても人が動かせる質量ではない。課長さんがSICURAを呼び出すと、ヨンと残念そうな声が返って来た。
『この扉は溶接された上に、電気系統が切断されているヨン。今、音波検査を掛けてみたけど厚さは80センチ、重量は聞くまでも無いヨン』
 第十課の二人を見遣ったが、取り立てて案はなさそうだ。
 俺はゴルフバッグからダークフォースを仕込んだ銃弾を取り出す。無意識で装填をしながら、SICURAに声を掛ける。
「SICURA、アレフに直に繋げ」
『どうした?』
 携帯電話から間を置かずアレフの声が響いた。俺はゴルフバッグを閉め、背中に背負い直しながら話を続ける。
「ブラックホールを使いたい。どれくらいで用意出来る」
『SICURA、画像を繋げてくれ。見えた方が集中出来る。…そうだな、あと1分待ってくれ』
 俺はジェスチャーで課長さんとスランを背後に下がらせる。拳銃を正面に構え、携帯電話から掛かるだろう声に耳を傾ける。
『いつでも良いぞ』
 アレフの言葉と共に発射される銃弾が、ばりっと紫色の電撃を放つ。ジゴスパークが宿っている銃弾が、開かずの扉に接触する瞬間に銃弾が弾け飛ぶ。溢れ出したジゴスパークの力が、次の瞬間に転じて放出された範囲を抉りとるように収束する。巻き込んだ全てを圧迫消滅させるブラックホールが、人の力では開ける事が出来ない扉に大きな穴を穿った。
 恐ろしいもんだぜ。この無慈悲なまでの強力な技に、毎度背筋が寒くなる。
 アレフの奴は自覚があんまりねぇけど、あんな甘い奴がこんな強力な力を持たされて同情しちまうぜ。俺は拳銃を腰のホルダーに納めながら話しかける。
「ありがとな、アレフ。油断してぶっ倒れてんじゃねぇぞ?」
『ケネスも、煙が切れているからと暴れすぎるなよ?』
 通話を切った俺は振り返り、十課の二人が頷いたのを確認して先に中に入った。
 それは巨大な大部屋で、研究棟だ。様々な培養液に夥しい魔物が浮かんでいるが、SICURAとその制作者によってシステムが破壊されたからか培養液の水は腐り生きているとは思えなかった。無音で薄暗い室内の中央に踞る巨大な影が、身じろいだ。赤く光る目がこちらを捉える。スランは薄暗さに慣れた目で見て、悲鳴のような声を上げた。
「八岐大蛇!?」
 施設を揺るがす咆哮が鼓膜を突き破る勢いで放たれる。巨大な胴体に生えた頭は8つ。尾は長く、足の太さは土管の直系並にあるんじゃないだろうか。竜の頭1つ1つが俺達を睨みつけ、殺意を滲ませて蠢く。鼻を腐臭が突いた。聖職者が清めた対ゾンビ対策の銃弾をもってしても、巨体過ぎて一撃必殺に持ち込むような急所が見つからない。
 アレフやルネのように攻撃に特化した能力者のいない俺達には、ちょっと分が悪い。
『魔物やゾンビを繋ぎ合わせた合成獣ね』
 キラナの声が携帯電話から響いて来たが、そんなもん分かってる。キラナの言葉が終わる前に、俺は駆出し矢を番えた。
「ま、いいさ。先ずはご挨拶よ! 頭1つ、吹き飛んじまいな…!」
 俺を噛み殺そうと大きく開かれた顎に、イオナズンの矢を放ち銃弾を撃ち込んで矢を爆発させる。竜の頭の根元が爆発し、肉塊が内側から弾ける。
 だが、至近距離で爆発させた為に、身体が浮き吹き飛ばされる。培養液しか入っていない容器に当たり、派手な硝子の音が割れる音と水の流れる音が響く。
 びっしょりだぜ。しかもこの培養液、世界樹の雫じゃん。使用された世界樹の葉は若葉だな。めっちゃ甘くて美味い。俺が培養液舐めて頷いてるんを視たんだろう。スランのツッコミみたいな言葉が聞こえた気がする。
 俺が胴体から吹き飛ばしたというのに、首だけになった頭はガチガチと牙をむき出す。腐った肉が床に散らばる中、不自然な光を認めたのは俺だけではなかった。
「スラン。あの黒い玉を破壊しろ」
 課長さんが噛み付こうとした竜の頭を避け、長身の彼の身長と同じ長さの棒を首に振り下ろす。すぱんと豆腐でも切るように上から下に抜けると、竜の首がずるりと落ちる。イオナズンの矢とは違う焦げた匂い。恐らく、あの棒には高熱になる仕掛けが施されているのだろう。熱で切るだけではないだろうが、使い勝手は棍、破壊力は斧と言った所だろう。いいなぁ。社長に作ってもらいてぇな。
 課長さんの指示にスランは即応した。銃弾を撃ち込むと、軽い硝子が3つ砕けた音が響く。音の余韻が消えると、俺が吹き飛ばしたドラゴンの首がぐったりと動きを止めた。
 そこから推測出来る事を、携帯電話の声が整理して伝えてくれた。良いサービスだ。SICURAも見習って欲しいもんだ。
『8つの頭を1つの個体が制御する事は難しい。しかも人工的に生み出した合成獣なら尚更よ。あの玉みたいな核に籠められた魔力が、それぞれ身体のパーツを動かしているんだわ』
「あの玉を全て破壊すれば、倒せるという事だな。スラン、視ろ」
 了解です。スランは器用に竜の攻撃を躱しながら、冷静な緑の瞳が竜を見つめる。緑の目は竜を視ているようで、別の世界を覗き込んでいるような不思議な光を帯びている。瞬き1つで戻ったが、もう視なくても分かると言いたげに課長さんに言う。
「個数確認。頭頂部に3つ、首の部分に3つ、胴体部分に5つ、足にそれぞれ1つ、中央に巨大な核が1つ確認出来ます。残り計55個です」
「55 個ぉ!?」
「やるしかあるまい」
 俺の悲鳴に似た声に、課長さんが冷静に言う。熱を帯びて先端を赤く染める棍を構え、竜を見遣る。
 課長さん、俺の矢はそんなにありません。背負ったゴルフバッグを揺らしてざらりと動く矢の数は、半分近くに数を減らしている。帰るまでが遠足と言うこの国だが、俺の常識では次の矢が補充出来るまでは安心出来ない。この戦いで使い切るのは、出来るだけ避けたいんだ。
 まぁ、課長さんはごり押しする自信があるんだろう。立ち回りを見た限りでも、この課長さんは常識はずれってくらいにタフだ。核の場所さえ分かれば、1つずつ壊してしまえる自信があるに違いない。教祖に逃げられちまうかもしれないのに、悠長な事を…。
 だが社長も依頼主の意向には従えと言う。まぁ、負け戦に賭けたと思うしか無い。
「だが、ケネス。お前の案を聞こう」
「へ?」
 完全な不意打ちに、俺は間の抜けた声を上げた。課長さんは器用に竜の攻撃を避けながら、それでも俺から視線を外さない。
「お前はこんな面倒な力押しではない、要領の良い方法を考えているに違いない。お前の顔は俺の案に不服そうだからな」
「不服じゃねぇさ。依頼主に従えと言われているからな。どんな無茶にも応じてやるとも」
 俺は素直にそう言ってやった。課長さんの真横に後ずさった俺に、課長さんは真摯な瞳で真面目極まり無い表情で言った。
「今の我々は共に戦う仲間だ。依頼の上下関係等無い」
 俺はあんぐりと開いた口が塞がらない。この国では冷酷非情でその名を轟かせる特殊能力犯罪対策室の課長を務める人物から、こんな甘っちょろい言葉が飛び出すとは思わなかった。俺は戦場でこんな緩い事を言える奴は、アレフくらいだと思っていたんだがなぁ。
「課長さん、実はうちの副社長並にお人好しだったんだな」
 にやりと笑うと俺は続けた。
「この部屋の培養液の中身は世界樹の雫だ。世界樹の雫がどんなものか、スラン答えられるよなぁ?」
「世界樹の雫は、強大な生命力を秘めた世界樹の葉を特殊な配合の薬液に漬ける事で完成する回復薬だろ。どんな重傷も瞬く間に回復させ、雨のように降らせれば大多数の人数を回復させる事が出来る。でも、貴重品だ。闇市場でも滅多にお目に掛かれないのに、この部屋の全ての培養槽に使われているとか信じられないよ」
 俺はスランの120%の解答に満足して頷いた。
「しかも、この世界樹の雫に使われているのは若葉だ。樹齢もとんでもなく若いだろう。俺も初めて見る」
 課長さんが促すように俺を見た。
「教団は世界樹の苗木を保有している。そこで、問題だ。成長した大木と同じ生命力と魔力を秘めた苗木を教団は手に入れました。その苗木から芽吹く若葉で世界樹の雫を作り、魔物の製造をしていました。しかし追いつめられ魔物の製造を棄てたら、世界樹の雫は要らないから苗木も必要ない。だが膨大な魔力を持った苗木を無駄にしないなら、何に使うでしょう?」
 スランがピンときたように、緑の瞳を見開いた。そして竜を見遣る。
「中心核…!?」
 正解。俺は頷いた。
 核の数が多ければ多い程、その制御には巨大な力を必要とする。吹き飛んだ断面から血が出ない所を見ると、生命ではなく魔力で動いている事は明白だ。だが、58…だったかな、それだけの核を維持するだけの魔力を帯びたアイテムはそうない。世界樹の苗木ならその生命力と魔力で、こんなギガント級の魔物を生き物のように動かす事ができるはずだ。
 そして俺は課長さんとスランにそれぞれ、小瓶を投げ渡す。俺が持ち帰ろうと詰めた、世界樹の雫がたぽんと揺れる。
「培養液に使われていた世界樹の雫だ。苗木にそれを一滴でも垂らす事が出来れば、苗木を急成長させる事が出来る。ただでさえ魔力を搾取されて頭を押さえつけられている状態だ。苗木は自己防衛の為に急激に成長しようと、切欠を待っているに違いねぇ」
 課長さんが満足そうに、スランが頼もしく頷きやがる。その作戦でゴーな。全く、お前らしょうもねぇなぁ。
 俺はゴルフバックからイオナズンの矢とイオグランデの矢を取り出した。
「スラン。天井をイオグランデで崩す。落ちた瓦礫の相殺と、中心部の筋組織を抉るのにイオナズンを放つ。連射するから、俺は爆発させる為の銃弾は撃てない。お前がいいタイミングで狙撃して爆発させろ。課長さん、突っ込むつもりみたいだが俺の矢は加減が出来ん。自分で身を守ってくれよ」
「了解した」
 課長さんが真面目な顔つきで答えた。
 なんで立場が逆転してんだよ。諾々と受け入れてんじゃねぇよ。生き死に掛かってんのに、仲間だなんだ甘っちょろい遊びしてんじゃねぇ。
 俺も、絆されちまって笑っちまうじゃねぇか。俺は小さく祈って矢を番えた。
 さぁ、俺の天使様。きっちり俺の命を、掴んでてくれよ…。
 相当高い天井に届かせる為に、俺は限界まで矢を引き絞る。悲鳴を上げる弓と腕に、俺は奥歯を噛み締めた。力の加減、引き絞り伝わるだろう力、それらが結びついたと直感が告げる。指を離し、指先を焦がして矢は天高く舞い上がった。まるで鳥のようにまっすぐ、甲高い鳴き声をあげて真っ直ぐ飛んで行く矢から目を離し竜を見遣る。
 イオナズンの矢を引き絞り、やや上を意識して放つ。
 スランが天井に放たれたイオグランデの矢を打ち抜いた。爆発と閃光が天井を穿ち、研究棟の天井の半分を吹き飛ばす。満天な星空と月に見惚れた訳ではないだろうが、スランが目を真ん丸くしたのは見えた。巨大な瓦礫が竜目掛けて落ちて来る。間髪置かずスランはイオナズンの矢も狙撃した。この狙撃の狙いに掛ける時間が、一呼吸なのに俺は思わず笑みを浮かべる。イオナズンの矢は爆発し、首の根元の筋肉を穿ち、そこへ降り注ごうとした瓦礫を粉砕した。
 巨大な瓦礫はつぎつぎと6本の首を押しつぶす。次々と雨霰と降って来る瓦礫に、首が拉げ頭が潰れる。だが、それでも死んじゃいない。
 ひらりと、課長さんが首の付根の上に飛び上がった。どうやら竜の影に潜んで爆風をやり過ごしたんだろう。
 棍を構え筋肉が隆起し吹き出す闘気が鬼神の如くだが、その表情は慈悲深い程に静かだった。唇が静かに接吻でも落とすように宣言した。
「奥義・棍閃殺」
 凄まじい衝撃に地面が揺れる。竜が一撃で沈黙したのを見て、俺は思わず呆然とした。
 久々に棍閃殺が使える奴を見た。っていうか、威力桁違いじゃね? 確かにこれならごり押し行けるわ。
 課長さんが立ち上がると、足下から仄かに温かい光が漏れだした。そこへ瓶のふたを開け傾ける。ふわりと風が生まれ、森の清涼な香りが鼻孔いっぱいに広がる。課長さんが竜の身体から飛び降りると、苗木はめきめきと成長しだした。根は八岐大蛇を模した合成獣を踏みしだき、押しつぶすようにその幹を太らせて行く。天井を尽き抜けぶわりと枝から葉が茂ると、美しい金色にすら光る雫を振り撒いて満天の空の下に君臨した。
 美しい若き世界樹を見て、俺はうっとりと微笑んだ。美味そう。

  ■ □ ■ □

「貴様が教祖イブールか?」
 課長さんが地獄の底から響くような低い声で訊ねた。
 最奥は小さな神殿になっている。清流が流れる美しい庭園の中央を白亜の石畳が貫き、深紅の絨毯が奥へ伸びている。祭壇の階段の途中にぼろぼろになった小柄な男性が伏していた。疲労困憊し歩くのもやっとな状態の男は、確かに神に縋る光の教団の教祖に相応しく思えた。
 男は掠れた声で忌々しく課長さんに言った。
「特殊能力犯罪対策室の者か…。国の狗ごときが、神の代行者たる私を止める事ができるものか」
 『我、汝に我が奇跡を与えん。されば汝、世の悲しみに我が奇跡を与えよ。終末の世を救済せよ』カミサマとやらが言った言葉を、男は確認するように呟いた。
「いや、できる」
 そんな男の信仰を打ち砕くように、課長さんが告げた。
「この世界が貴様のような悪しき力に惑わされた者に、簡単に屈すると思ってもらっては困る。これから貴様は視るだろう。自ら築き上げた偽りが、私と私の部下とその協力者によって崩れ去る様を。そして国の法によって裁かれる」
 課長さんが男の腕をとった。男はされるがまま、ただ意思は屈していないと瞳だけ憎しみに燃えている。
「世界の滅亡を企て実行しようとした罪。死者の魂を、生きとし生けるものの善良な意思を愚弄した罪。これから購ってもらう」
 そして、毅然とした態度で、威厳ある声色で告げる。
「光の教団、教祖イブール。貴様を逮捕する」
 課長さんが手錠をかける音が響いた。
 そんな一部始終を後方から見ていた俺に、隣に居たスランが声を掛けて来た。
「何を笑っているんだ?」
 法と無縁の世界に居た。制裁は死であり、下すのは個人だった。
 だからこそ、法で裁く事を甘く思う反面恐ろしく思う。法は人の集合体だ。この男は世界中全ての人間から、その罪を改められ、そして裁かれる事を望まれる。力でねじ伏せられるとかそんな程度ではなく、存在そのものを攻撃する恐ろしい手合いだ。
 俺は心底こう思う。
「…敵に回したくねぇなって、思っただけさ」
 俺は矢がしっかりゴルフバックの中に納まっているのを再度確認し、火の入っていない煙管を銜えた。
 火が入れられるのは、全員揃ってからと決めている。