緩く考えるシリーズログ3
■ 『パクレ警部の事件簿炎上事件』について緩く考える ■
さて、現在DQ10で炎上騒ぎとなり公式が謝罪するレベルに発展した『パクレ警部の事件簿』事件について、稲野が緩く考えていきます。この内容は全て私、稲野個人の私的見解であることをまずは留意いただきたく思います。
ここをお読みになる多くのDQ10プレイヤー以外の方々へ、まずはことの顛末をご説明いたします。
DQ10では、キャラクタープロファイルシリーズという、脇役にスポットを当てた3話仕立てのストーリーを展開しています。今回はパクレ警部というキャラクターにスポットが当たることが、DQTV、アップデート情報にて告知されておりました。
実際に実装されてみると、アストルティアの世界観とは違いすぎたもの、パクレ警部というキャラクターが変わり果てていたことに関してかなりの不満が噴出し、ストーリーの展開を話し合う場が荒れに荒れました。
この事態を重く見た運営は、謝罪と実装したストーリーを補完する内容を追加することとなりました。
おそらく、公式、ストーリーを書き上げたシナリオライターさん、グラフィックを担当した方、今回のストーリーに関わった全ての方が、凹んでいることでしょう。心の底から同情しています。
まずは一番の不満点であろう、パクレ警部の人物像への批判から述べていきます。
パクレ警部とは警察組織のないアストルティアでは自称『警部』であって、本当に警部ではありません。呆れるほど平和なオルフェアで警部をやって30年、酒場のツケを貯めたり、悪ガキ集団ダンダダ団を追いかけたりと本人的には大事件を次々を解決しています。性格は癇癪も思い込みも勘違い甚だしく、アグレッシブな迷探偵と言って良いかもしれません。
そんな警部。キャラクタープロファイルではさぞや迷探偵ぶりを発揮して、様々なところに迷惑を振りまき、尻拭いをしただろう主人公を尻目に『ふっふっふ、これぞ、ワガハイの実力!さぁ、次の事件が待っている!』とか抜かして駆け出して終わるんだろうなって思いましたよ。そんな事をしても微妙に憎みきれないのがパクレ警部です。
実際に実装されたのはデキる男パクレ。豆腐の角に頭をぶつけたレベルの別人であります。達人の身のこなしで任務を遂行する敏腕エージェント、敵からは『死の道化師』と恐れられる逸材であります。
いやいやいや、まって!パクレ警部ってそんなキャラじゃないですよね!ってなったのが、今回の炎上騒ぎの最大の要因です。何気に愛された男パクレ。彼が愛されたが故に噴出した不満であります。しかし、デキる男パクレが真の姿であったとしても、今までの迷探偵ぶりが演技でありそれを演じていれば少しは違ったでしょう(たぶん)。原作であるver1から出来上がってパクレ像を大切に生かすことが出来ていなかったことが問題であったのでしょう。
あと、主人公・プレイヤーが噛ませ犬っぽい扱いをされたのが気に入らなかった人もいるはず。
まぁ、ね。ちょっと蚊帳の外的な扱いは怒る人はね…いるかもしれませんね。
さて、世界観の批判。こちらが相当根深い。
パクレ警部の追加設定に関してはどの段階からは不明ですが、彼が所属する組織が実装に至るレベルの構想を得たのはver4の構想が始動したあたりではないかと思います。つまり、本格的な時空間移動による冒険の開始からです。
DQ10の主人公は『時渡り』という時空を超える能力を持った特殊な一族であります。(この時空を超えるということに限れば、時渡りの能力を持つ人物である必要はないと思われます。しかし、跳ぶ先の時間を設定し、跳躍するために必要な制御はこの一族である必要があると現在では推測しています)そのために、ver4の流れは最初から考えられていたストーリーでありましょう。10年の運営を見据えていれば、当然と言えます。
そして、ver3までの冒険を経て、満を辞して時間を超える大冒険が始まるわけです。時を超えた冒険といえばクロノ・トリガーを思い出す私。そんな名作を生み出した方が、今回のDQ10にも関わってくださいっています。
時間を跳躍するということは、歴史を変えること。クロノ・トリガーが求めたテーマが、DQ10にも入ってきています。ある意味、過ぎ去りし時を求めた11とは違う、タイムパラドクスなどの観点を見れば現在のSFに近い現実的な視点が必要になります。そうじゃない。それはDQじゃない、そういう人もいます。ただし、過ぎ去りし時を求めた11がDQっぽい時間冒険であったなら、それ以外のアプローチを仕掛けるのは当然であり、むしろここから過ぎ去りし時を求め始めたら二番煎じと罵られかねません。DQ10のスタッフからは『時間超越で発生した矛盾などを、ファンタジー的理由ではなく、きちっと説明してプレイヤーに理解していただきたい』という姿勢が伺え、そのためにSFめいたカチッとした設定や世界観を徐々に盛り込んでいるのではないかと思います。実際に今までの流れに矛盾点の発生が非常に少ないことからも、スタッフの方々が綿密にストーリーを練っているのがわかります。主人公が『時渡り』の能力を持って生まれた。その時点からここまで育てた設定を、ぜひ恥じることなく進めていただきたいです。
少し話はずれましたが、炎上の理由の一つであるのが警部が所属しているという組織。時間を超えて様々な超常現象を監視・制御する組織の登場であります。これが今までのver4の設定にそぐわないと不満が出ています。まぁ、SFですよね。
ただし、これもアルウェーンの設定上、十分にありえることです。
最後の最後で宇宙人みたいな存在が出るのですが、これはDQCHの満月の塔イベントで宇宙人っぽい何かとして白いホイミスライムみたいなのが出ているので実は真新しい設定ではありません。むしろDQ10はどのDQシリーズより宇宙設定を出しています。そしてアルウェーンに残されているプクリポと、超絶に文明の発展したアストルティア外生命体が出会って組織体系を作るなら、情報の多いプクリポの姿でアストルティア入りすることはある意味当然でしょう。
この後は、890さんが『ダメ警部の演技頑張らないとダメでしょ?溶け込めてない現状を思えば、ミッション遂行をあなたに任すわけにはいきません』って上司に叱られて、愛されたダメ警部としてオルフェアに帰ってきてもらいたいという願望があります。しかし、公式がどこに落としどころを見つけるのか、見守っていきたいものです。
最後に。
私、今回のパクレ警部の事件簿、とても影響受けました。
というのも、今まで主人公を助けてくれた影、あれを警部の所属する組織に任せるとすんなり丸くおさまるからです。ver4小説を書くとするならば、主人公と共に時を跨げる存在が必要です。エテーネ人ということで人間を考えていましたが、今回のクエストでこの組織の人員を起用しようと割と本気で考えていました。それくらい、魅力的で説明力のある設定だったのです。私は好きです。
事故ってあらゆるヒヤリハットを奇跡的にすり抜けて発生するといいますが、まさにそうだなと思いました。
2019/01/31
大炎上したパクレ警部の事件簿への対応として、追加されたクエストは結論から言えば、納得できる終わり方でした。
ただし、今回の追加クエストは炎上に対して急遽ねじ込んだ設定であることを確信させてくれるようなものでした。苦し紛れな弁明とも言えそうで、個人的にはパクレ警部の事件簿はシナリオとして完成されていたのでしょう。外からの炎上で形を変えざる得ない。そんなシナリオ担当はかわいそうな限りです。金銭が発生しているので完全に同情するべきではないのでしょうが、一人の執筆者としては同情を禁じ得ません。まぁ、私も全く知らない人が読んだらどうなるかって視点で自分の執筆したものを読み返すよう心がけています。自分の力量に過信せず、初心を忘れず頑張っていただきたいものです。私もがんばる。
ちなみに私がこの終わり方を想定してシナリオを書くなら、ジュレットの段階で布石を敷くし、追加クエストで新たに出現したキーアイテムをプレイヤーに持たせます。そうした方がプレイヤーがクエストの主軸となるため、かませ犬的ポジションに甘んじなくてはならない展開に激おこぷんぷん丸だったプレイヤーの溜飲はだいぶ下がったでしょう。
おそらく、多くのプレイヤーがこれならば致し方ないと納得してくれる、絶妙な落とし所でありました。
流石は…、と申しておきたい。
今回のイベントをクリアすると、オルフェアの酒場の女の子がパクレのオヤジ来ないって心配してくれるようになるので、すごく安心しました。あいつやばいから付き合わない方がいいなんて台詞、オルフェアには全く似合いませんからね!
2019/07/11