『ただいま』と『おかえり』の話

 ■ おかえりって貴方が言うから ■

 デデデ大王の城の執務室には、所狭しと資料や書類が置かれるようになりました。新しく新調した棚は瞬く間に最近寄せられた書類でごった返し、使ってない部屋が次々と保管場所として埋まっています。ワドルディ達が頭の上に資料の束を持って、右往左往する様子も日常の光景です。
 元々、デデデ大王は本当の王様ではありませんでした。
 それどころか、プププランドには王様なんていません。呆れる程に平和なので、せーじとかとーじとかは必要ないのです。皆で仲良く和気藹々、今日も明日も明後日も呆れる程に平和なのです。
 デデデ大王はさしずめ、悪ガキ達のリーダーみたいな存在でした。大王と名乗っていたのは、ノリみたいなものでしょうか。
 そんなある年、一際強い春風が吹いた後で大王様の立場は劇的に変わって行きました。
 最初にやって来たのは、綺麗な封筒に見た事も無い国の名前。その封筒の中身は、大王様に謁見したいのですが御都合の宜しい日はありませんかと言う内容でした。あまりに婉曲な表現な為に、ポピーブロスSr.もなかなか解読出来ない程です。その手紙を皮切りに、様々な手紙が大王様の元に届きました。貿易の話、観光の話、招待の誘い、どれもこれも大王様には縁のなかった頭の痛い内容でした。
『自業自得だと思いますよ』
 そう、ポピーブロスJr.が笑いました。
 プププランドには王と呼べる人は長らく居ませんでした。そんな歴史の中で自称であっても『大王』を名乗る者が現れた。他国の王が話を持ちかけるべき代表者、デデデ大王は自称であっても白羽の矢を立てるには十分目立つ存在だったのです。
『どうするんです? 応じなければ、その程度だって手紙も来なくなりますよ?』
 大王様は負けず嫌い。やる気がかちんと音を立てました。
 お城はピンク玉に滅茶苦茶にされた関係で、新築みたいにピカピカです。綺麗な食器に手入れされた中庭、ワドルディ達のお陰で城の中は何時でも綺麗です。いつでも誰にでも開かれていて、たまに大きいねずみが入り込んではワドルドゥ隊長に追いかけ回されたり、ハルバードが滞空しては船員達が一時の地上を楽しんだりしています。他の星の王様が来たり、ポップスターの商人なんかが紹介を頼みにやって来る事もあります。デデデ大王の城は自然と沢山の人が集まってくるようになっていました。
 今では自称じゃなくて噂になる程度に、王様をきちんとしている大王様です。呆れる程に平和な国を支配するつもりは無いけれど、呆れる程の平和がいつまでも続く事を誰よりも願っている王様なのです。民は知らないけれど、部下は大王様が良い王である事を知っています。
 最近はピンクで丸い勇者の影響か、ポップスターの存在は知れ渡っています。
「ただいま!」
 そんな大王様の執務室の窓が勢いよく開け放たれました。
 いきなりの事に机の上の書類が、紙吹雪の如く舞い上がるのです! わにゃーわにゃーとワドルディ達が大わらわ! 風に乗ってぽよんと落ちたピンク玉は、机の上に載っていたインク瓶を頭から被ってしまいます!
 じわりと広がった黒い水溜まりの上に、カービィが立ち上がりました。しげしげと自分の身体を見下ろします。
「だいおう ぼく なんだか くろい」
 大王様が咄嗟に捕まえて持ち上げると、べしゃりと腹巻きも着物もインクだらけです。カービィは ぽよっと驚いて大王の手から逃げ出します。舞い上がる書類を追いかけるワドルディの合間を、縫ったりぶつかったり。絨毯の上は黒い足跡ぺったぺた、黒い斑模様のワドルディがたくさん出来ました。
「うお! このピンク玉、動くんじゃねぇ!」
 滑り込んで大王様がようやくマーブル模様のカービィを捕まえた時には、時既に遅し。執務室は滅茶苦茶です。
「お帰りなさい、カービィさん!」
 呆気にとられる間も置かず、扉が開け放たれブラシを構えたワドルドゥ隊長が駆け込んできました。背後には石鹸あわあわと溢れるバケツを持ったバンダナワドルディを筆頭に、気合い十分な部下達が控えています。
「さぁ、出てってください!」
 ぽいぽい! ぽーん!
 大王様諸共、カービィは入って来た窓から城を追い出されてしまいました。
 地面に軽やかに着地した大王様は、頭上から雨霰と降って来る斑ワドルディ達を受け止めては地面に降ろします。わにゃわにゃ頭を下げる斑模様達を見下ろして、大王様は小さく溜息を吐きました。


 ■ □ ■ □


 汚れたガウンは剥ぎ取られ、大王様は紫のガウンと着物、星の絵柄の腹巻き姿です。カービィもほわほわと石鹸の香りを漂わせています。
 掃除が終わったらお迎えに上がります! そうサーキブルに送り出されて数時間、執務室の汚れは相当酷いのでしょう。空が暗くなり始めたと言うのに、未だに部下が呼びに来る様子はありません。
 のんびりと空を見上げて、一つ一つと輝きだした星を大王様は見上げています。
「帰って来て早々、お騒がせな野郎だな」
 隣には何故かカービィ。家に帰らずちょこんと隣に座るピンクの頭を、大王様は乱暴に撫で回しました。カービィはぽよぽよと撫でられるがままです。
「だいおう らんぼう いたい いたい」
 淡い紫色の手袋を、ピンクの小さい手がぺちぺちと叩きます。大王様は愉快そうに笑いました。
 カービィはプププランドに来る前は、様々な所を転々とする根無し草の旅人のような生活をしていました。プププランドに家があっても、数ヶ月単位で家を空ける事がありました。初めてカービィが他の星に旅に出掛けた時、呆れる程平和なプププランドは騒然としました。殆どの住民がプププランド中を探しまわり、誰も彼もがはらはらと心配しました。帰って来た時は大王様以外全員が、カービィに抱きついたくらいです。大王様は抱きつかないかわりに『ようやく戻ってきやがったか、心配させやがって』とぼそぼそおかえりと言うだけでした。
 カービィにとっては初めての事でした。プププランドに戻って来たのも、大好きだったマキシムトマトを取りに戻っただけだったのです。
 それからカービィは大王様には『でかけるね』と、一言言って旅に出るようになりました。
「で、今度は何処に行って来たんだ?」
 大王様の問いにカービィは蒼い瞳を瞬かせ、くりっと一つの星を指し示しました。
「あの ほしに いってきた」
 もう、空は満天の星で満たされています。カービィが指し示した星がどれなのかは分かりませんが、大王様は星の一つ一つに国があって様々な人が生きているのを知っていました。
 カービィは今回の旅の話を始めました。綺麗な風景、優しい人達、悪い奴をこらしめた、おいしい食べ物いっぱい食べたものちょっとしか食べれなくて残念だったものおいしいご飯を作ってくれるお店美味しい果物が実る穴場の森、食べ物の事ばっかりです。
 食べ物の事を話すカービィの表情は輝いているのです。大王様も食べる事が大好きなので、他国の食べ物情報は真剣に耳を傾けてくれます。
 でも、最後の方になると夜空の星の話になります。
 プププランドのある星が何処にあるのか、その星がどれだけ輝いていたのか。
 ふと、大王様は思い出したように言いました。
「おかえり、カービィ」
「ただいま デデデ」
 カービィが満面の笑みで大王様を見上げました。
 大王様もにやりとカービィを見下ろします。
 カービィにとって『おかえり』がどれだけ素敵な言葉なのかを、大王様は知りません。帰る場所が無かった旅人に、帰る場所が出来たと言うのがとても大きな変化である事を知りません。でも、きっと大王様は気が付きません。デデデ大王は部下達を含めて、帰る場所を守る大王様なので当たり前に思ってしまっているのです。
 プププランドは大きなおうち。
 カービィが ただいま を言える人が居る場所なのです。


 ■ ただいまって貴方が言うから ■

 ワドルディは何処にでも居ます。
 お日様ぽかぽかの草原、小川さらさらの川辺、皆でわいわいのお家、パラソル広げりゃ空の上、迷子を探すなら森の中。オレンジ色に黄色い足をちょこまかと、ワドルディが居ない場所があるならお目に掛かりたいくらいです。最近は、宇宙にだっているんですよ。
 宇宙を駆ける戦艦ハルバード。宇宙銀河に名を轟かすメタナイツの戦艦は、プププランドに降り立つ時はデデデ山と決まっております。
 デデデ大王の城の横に停泊したハルバードから、トンテンカンと修繕の音が響きます。戦艦から水兵帽を被ったワドルディが、忙しなく乗ったり降りたりしていました。
 水兵帽を誇らし気に被ったワドルディを、デデデ城のワドルディ達がわにゃわにゃ追いかけ回します。水兵帽は逃げろや逃げろ。思わず落とした部品は、追いかけているワドルディが拾ってくれます。端から見れば、水兵帽のお手伝い。
 てってって。部品を持って逃げていた水兵帽は、ぽよんと何かにぶつかりました。
「こらこら、お前達。いい加減にしないか」
 ぶつかった拍子にズレた水兵帽を持ち上げます。
 水兵帽の前に居たのは、お城の主のデデデ大王です。大きなお腹をぐるりと巻いた腹巻きの鮮やかさ、大きな身体がもっと大きく見えるふかふかガウン、そして星空のような青い青い瞳。黄色いミトンがさり気なく水平帽子に差し出されると、オレンジの手を優しく握って羽の様に立たせてくれました。
 大王はわにゃわにゃ不平を漏らすワドルディ達を、ぎろりと睨みつけました。
「コイツにはハルバードを修理する仕事があるんだ。邪魔をするな」
 わにゃー…。
 渋々納得したワドルディ達は顔を見合わせた次の瞬間、元気よく飛び出して行きました。気持ちの切り替えがあっという間なのも、ワドルディの良い所。
 オレンジのまあるい背中達を見送ると、大王が水兵帽を見下ろして悪びれなく詫びました。
「悪気はなかったんだ、許してやってくれ」
 水兵帽はふるふると身体を横に振りました。水兵帽を被っているだけで他のワドルディと大差ない仕草に、大王はニカッと笑います。
「お前さんはポップスターの出身じゃないな。ここは良い所だ。散歩の1つもしないと勿体ないぞ」
 水兵帽は吃驚。目を真ん丸くして、のしのしと去って行く大王の背中を見送りました。
 ワドルディは何処にでも居ます。
 ポップスターだけじゃありません。ハルバードが立ち寄った沢山の星に、沢山の国に、ワドルディは居りました。水兵帽を被っていなければ、彼は他のワドルディと全く同じなのです。メタナイツだって、ワドルディを見分ける事は出来ません。
 どうして、大王は分かるのでしょう?
 ぼーっとしていた水兵帽は、手に持っている部品の感触にハッとしました。お仕事しないと!
 メタナイツ達に混ざってトンテンカン。水兵帽は帽子の下に籠った熱気を追い出そうと、手を止めて帽子をぱたぱた。
 デデデ山はプププランドでは一際高い山ですので、頂上に建つ城に添うように停泊するハルバードの上からの景色はとても素敵です。グリーン・グリーンズの草原や、ウィスピーウッズの森の鮮やかさ。アイスクリーム・アイランドをアクセントにした、星を散りばめたような輝く海。白くふわふわ流れる雲は、クラッコの機嫌の良さを示しているようです。
「おい、手が止まってるぞ」
 背後から声を掛けられて、水兵帽は飛び上がる程に驚きました。
 知らない国なのに、初めての星なのに、何故だかとっても懐かしかったのです。
 『散歩の1つのしないと勿体ないぞ』
 大王の言葉に居ても立っても居られない。水兵帽は手早く作業を終えると、メタナイトの元へ駆出しました。
 メタナイツ達の『恐れ多い』や『何もメタナイト様がやらなくても…!』の声を退けながら、騎士も作業に加わります。やや完璧主義なメタナイトですが、一緒に汗水垂らして油塗れになる主人を誰もが好きになってしまうのです。作業を終えてお茶だけは待っていて下さいと、ブリッジで寛ぐメタナイトは直ぐに水兵帽に気が付きました。
 鎧とマントと仮面、身体は水兵帽と同じ丸くて小さい。それでも彗星の如き剣捌きと称される騎士は、仮面の下で金色の瞳を瞬かせました。
「どうかしたか?」
 水兵帽はわにゃわにゃと、散歩に行きたい事を騎士に伝えました。
「この国には数日、食料の補給の為に留まるつもりだ。修理も終わったし、楽しんできなさい」
 騎士の労りに満ちた優しい言葉に、水兵帽は首をふるふる。夕食までには戻ります。
「ふむ。気をつけなさい」
 そう騎士は宇宙のように深く低い声で送り出してくれました。水兵帽はぺこりとお辞儀をして、ブリッジを出ます。
 てってって、甲板を駆けて、デデデ大王の城を繋ぐ板を滑り降りました。デデデ大王の城に到着するや否や、水兵帽は沢山のワドルディに取り囲まれてしまいました…!
 水兵帽は吃驚。どうしようとおろおろしちゃいます。
 しかし、よーく見ればワドルディ達は色んな物を持っています。ある者はサンドイッチが溢れそうなバスケット、籠に山盛りのフルーツ、風呂敷に沢山のジュース瓶、ケーキが入った箱、タンバリンに横笛、シャボン玉、でもなんだか食べ物ばっかりです。彼等はキラキラと輝く瞳で、水兵帽を見つめていました。
 水兵帽はピンと来ました。この子達は、さっき自分を追いかけてきた子達だ。
 水兵帽がわにゃ!というと、以心伝心。
 ワドルディ達も嬉しそうにわにゃ!と答えました。
 先導だろう一回り小さいワドルディの後を、わにゃわにゃワドルディ達は行進します。デデデ大王の城に居る誰もが、そんなワドルディ達の行進を温かい目で見ていました。玄関だろう大きな門を開ける時に少し振り返れば、大王が悪戯っぽい笑みを浮かべて手を振っています。
 ワドルディ達の行進はまだまだ続きます。
 日が少し傾いてきて柔らかい日差しに色付く緑の絨毯が、行進の終点です。ワドルディ達は水兵帽が目を丸くするような手際の良さで、瞬く間に料理を並べグラスを配り宴会場にしてしまいました。少し大きめの岩の上はお立ち台。水兵帽を上がらせると、ワドルディ達は一斉に手を叩きました。
 ワドルディ達は宇宙に出掛けた、珍しい旅人の話が聞きたくて仕方がありません。
 水兵帽も勿論、お城のワドルディ達の好奇心を我が身のように理解しています。水兵帽はメタナイトに連れられて宇宙に出る時のワクワクを、星を飛び出し宇宙に包まれたドキドキを昨日の事のように思い出すのです。お話ししたら大喜び間違い無しに決まってます。
 でもでも、とっても恥ずかしい。
 水兵帽は顔が真っ赤。顔の肌色がオレンジの色と一緒になって、オレンジの真ん丸になってしまいました。
 ワドルディ達は水兵帽を岩から下ろすと、様々な物を勧めました。どれもこれも美味しい物ばかり。プププランドの素敵な所や、今日の日差しは温かいとか、大王とピンクの悪魔のグルメレースの様子とか、わにゃわにゃ賑やかしいったらありゃしません。水兵帽は彼等の話が楽しくて、いつの間にか彼等と一緒に大笑い。
 料理も殆ど食べ尽くされても、楽しい時間は終わりません。誰かがわにゃわにゃ踊りだせば、誰かが草笛を吹いて手拍子叩き、皆で足踏みをして歌うのです。
 水兵帽はすっかり楽しくなってしまって、デデデ城のワドルディ達と時間を忘れて過ごしました。


 ■ □ ■ □


 夜の帳が落ちたとしても、ここは平和なプププランド。月は明るく、星は瞬き、温い風が心地いい。
 もう、疲れて動けない。ワドルディ達は心地よい疲れの中で、夢の世界に旅立って行きました。ぷーぷー、可愛らしい鼻提灯が月の光に七色に輝いています。すやすや眠るワドルディ達の寝息の大合唱を、見下ろす影達は呆れた様子で見下ろしていました。
「随分とまぁ、夢中になっちまって」
 そう、にやりと笑ったのはデデデ大王です。その大王の横でメタナイトが息を吐きました。
「迷惑を掛けたな」
「迷惑? こいつらの何処が、迷惑掛けられたような顔してるんだよ」
 遊び疲れてるようにしかみえねぇし。大王はお腹を叩いて笑うと、ワドルディを優しく抱き上げて一カ所に集め始めました。月は明るく風は優しいけれど、夜が深まれば流石に冷えるのです。ワドルディ達は眠っていてぽかぽか。隣のあの子と頬をくっ付け、気持ち良さそうに口元がもぐもぐ動くのです。
 最後に風よけに、大王印の大きなガウンをふわり。こうなったら、朝まで目覚めやしないでしょう。
 どっこいしょとワドルディ達の隣に大王が腰を下ろすと、騎士も水兵帽の隣に腰を下ろしました。すやすやと穏やかな表情で眠っている水兵帽を、騎士は仮面の下で目を細めて見つめています。
「私の我が儘が、部下の選択を奪ってしまっているのではないかと思う時がある」
「好きでやってるんだ、お前が気にする事じゃないさ」
 騎士は仮面の下の瞳を、少し鋭くさせて大王を見ました。無責任な。そう瞳が訴えている事を、大王は分かっていました。生真面目な騎士と、不真面目な王様はなかなかに長い付き合いなのです。
 月に雲が掛かり少し薄暗くなった空を見上げ、騎士は溜息のように呟きました。
「何時戻っても、プププランドは変わらんな」
「おう、おかえり、メタナイト」
 場違いな程の脳天気な声。騎士は少し口調を明るくしていいました。
「デデデ、貴方はいつもそう言うな」
 メタナイツすら見た事のない珍しい騎士の笑い声に、大王はワドルディ達を起こさないように笑いました。
「『戻って』きたんなら、『おかえり』が良いだろう?」
 『ただいま』を言う者全ての帰る場所。いつまでも変わらない平和な星。そんな星から見上げる夥しい数の星々には、悲劇も残酷な戦いも沢山含まれているのです。戦いの場が騎士の生きる場所です。そんな時間から離れていられるこの星を、尊く思うと同時に壊してしまいたいとも思ってしまいます。自分達がこの星に相応しくないと分かっていながら迎える王の懐の大きさに、騎士は苦笑するばかりです。
 ただ、大王は一筋縄ではいきません。
 ワドルドゥ隊長の剣捌きに、ソードナイト達が歯軋りして悔しがったのが最初の頃。武器を片手に森に行ったら、ウィスピーウッズに手痛い洗礼を受けたと報告は毎度の事。花火を打ち上げ楽しんでいたカブーラーとポピーブロスシニアの巻き添えになって、クラッコの雷に撃たれた者も数知れず。平和な国なんてとんでもない。強かな猛者ばかりです。
 騎士は空を見上げ、仮面の中で呟きました。
 ただいま。
 …気恥ずかしいな。おかえりが返って来ないと。
 プププランドは大きなおうち。
 ただいま を言う全ての者に、おかえり を言ってくれる人が居る場所なのです。