金色トマトと7つの話

 金色トマトは想いの間を行ったり来たり。結果は誰にも分からない。


ひとつめ
 赤の中に混じる金色トマト。
 一体、どんな味がするんだろう。きらきら金色に瞳を輝かせ、食い入るように見ているのです。
 如雨露やスコップを持ってえっちらおっちらワドルディ達は、この金色のトマトが実る時を心待ちにしています。
 やがて大きく真ん丸に実った金色のトマト、さっそく、大王様に食べてもらおう!
 ひとりが鋏でちょっきんこ!
 わーいと赤い手の上をコロコロ転がる黄金色を、黄色いミトンが掴みました。
「お前達が育てたのか」
 大王様が嬉しそうに言うと、それをワドルディ達に差し出しました。
「一口目は丹誠込めて育てた奴の特権だ」
 ワドルディ達の一口ずつで、金色は消えてしまいましたが大王様は満足そうに笑っていました。


ふたつめ
 金色トマトの噂は絶対ないしょなんですが、ワドルディは沢山なので筒抜けです。
 ワドルディ達の畑に、最近ピンク玉が現れます。金色のトマトが実りそうなのが分かると、毎日毎日やってくるのです。
 だめだめ、次こそ大王様にあげるんだい!
 ワドルディ達は一生懸命言いましたし、カービィも納得しようとするのですが「おいしそう」と涎がじゅるり。
 こりゃだめだとワドルディ達は半ば諦めです。
 大王様がその事を知ったら大笑い。ミトンをひらひら言いました。
「トマトは逃げやしないから、食わせてやりゃあ良いよ」
 ふたつめはカービィが幸せそうに平らげてしまいました。
 次こそは大王様に食べてもらおう。
 ワドルディ達は固い決意で頷き合いました。


みっつめ
 今度こそ、すっごく美味しい金色トマト!
 ワドルディ達は燃えています。
 しかし困った事に赤いマキシムトマトばっかり、金色トマトが実りません。ワドルディ達はわにゃわにゃ慌てふためいて、色んな所に行きました。森でふかふかの腐葉土笊いっぱい、美味しい水と遠くから汲んできた、雲の上に登って星屑拾ってきた子も居ます。
 とりあえず、良さそうだからと打ちまけてワドルディ達は祈ります。
 今度こそ、美味しい金色トマト!大王様に食べさせたいな!
 願いが届いたんでしょう。翌日実った金色トマトは特別で、星のようにきらきら輝いています。
 わにゃわにゃワドルディ達は小躍りして、トマトの周りを回りました。
 鋏でちょっきん。持っていこう!


よっつめ
 ずしんと地面が揺れて、ワドルディ達はわにゃわにゃ大わらわ。
 大きな植物がにょきにょき生えて何もかもを押し上げているのです!彼等が目指していた大王様のお城も、持ち上げられて城の窓が何だか弱気な形に見えてしまいます。
 急げや急げ。
 ワドルディ達が一生懸命登りますが、よちよち身体が重い。後から来たカービィにあっという間に抜かれてしまいました。
 それでも登ったワドルディ達ですが、空から1つ何かが居りてきたと思ったら、何かを持って城から飛び出して行きました!
 遠目からでも分かります。何かは網みたいなもので大王様を包み込んで持って行ってしまったのです!
 カービィが追いかけて行ったのが見えました。
 僕達はどうしよう!


いつつめ
 青いバンダナのワドルディが、槍を片手に飛び出して彼等と派手にぶつかりました。そそっかしい者同士、ぺこぺこ頭を下げ合います。
 バンダナワドルディは金色のトマトを見つけて「どうしたの?」と訊ねました。
 ワドルディ達はわにゃわにゃ、大王様にあげるんだと言いました。でも、弱いから大王様を助けるなんて出来ません。ワドルディ達はしょんぼり。
 青いバンダナはワドルディ達の頭を優しく撫でて言いました。
「大丈夫、ボクが届けるよ」
 ワドルディ達には願っても無い申し出です。全員が金色のトマトに願いを込めて撫でて、青いバンダナに託しました。
 槍とトマトを片手に任せてと胸を張る姿は、ワドルディ達の希望そのものでした。


むっつめ
 常夜の都はワールドツリーの終点です。
 大王様は青いバンダナから金色のトマトを渡されたのです。
「お、あいつらの金色トマトか」
 嬉しそうに受け取った大王様は、トマトからぎゅぎゅっと詰まったプププランドの力を感じました。大王様は愛おしそうに眺めて、袖にそっと入れてしまいます。
「たべないんですか?」
 戦いでボロボロの大王様に青いバンダナは訊ねました。
 大王様は笑うだけ。食べる前から愛情いっぱいでお腹がいっぱいになってしまったなんてとても言えません。
 それに…大王様は思います。見捨てられたタランザを、独りで立ち向かうカービィを放ってなんて置けません。
 大王様は駆出して、その後を青いバンダナが追いかけます。


ななつめ
 金色トマトを差し出されて、タランザは目を真ん丸。
 どうして寄越そうとするのか、訳が分かりません。それどころか、女王に見捨てられ攻撃された事はタランザの心を打ち砕くには十分過ぎる事でした。
「やるから、とりあえず受け取れ」
 下界の勇者は無理矢理タランザに金色のトマトを手渡しました。
 じんわりと伝わる温かさ。金色トマトにたしたしと塩っぱい雨が降り注ぎます。
「それは、復活トマト」
 そう大きな勇者が頬を掻きながら言いました。
「部下のお前が主を信じるのなら、俺様もお前の主を信じてやろう。その奇跡を何時使うかはお前が決めれば良い」
 タランザの手を勇者は取り、立ち上がらせました。
「さぁ、いこう」勇者は言った。