『執筆方法』について緩く考える

 最初はDQの執筆から語っていきましょうか。
 私は自分のDQ執筆を『朝の連続ドラマ方式』と思っております。
 というのも、DQは一つのイベントが長くなってきている傾向にあります。一つのイベントに対して、お使いを求められる場合が増えてきました。問題の元凶であるボスを討伐する前に、その問題点を探るための調査や、キーパーソンの治療や救助などのためにどこかへ赴いたり材料集めを行うことが増えてきました。これは、DQのシナリオ容量が増え、よりドラマ性が増したことが理由でありましょう。
 ドラマ性が増したゲームでは二次創作の冒険譚は大分オリジナリティが減っていきます。ドラマ性が増すということは、作品で通過しなくてはならないチェックポイントが増えるということになり、チェックポイントが多ければ多いほどに『ゲームの物語を追って行くだけの物語』になっていきがちです。
 ロトシリーズのような必要最低限のシナリオでは、二次創作の仲間たちの掛け合いや仲間たちの過去が物語に絡みます。勇者の仲間がジパング出身なら、卑弥呼と関係があるとかそんなオリジナル設定です。このチェックポイントの少なさを執筆者の制作キャラのドラマで補うことで、ドラマ性を生み出すのです。
 とはいえ、最近のDQでオリジナル設定は必要ないかといえばそうではなく、『主人公は貴方自身』という公式の姿勢が揺るがない限り、どんなにドラマ性が増したとしてもオリジナル設定は必然的に生まれるのです。しかし、二次創作で冒険譚をやっていると、ゲームのイベントを無視した進行は深刻な矛盾を生み出しかねないのでできません。
 しかもシナリオは一区切り長い。私はあんまりにも長い話を書くのは、好きじゃないです。
 そこで生まれたのが『朝の連続ドラマ方式』。
 これの元は昔7竜でやっていた20分執筆チャレンジなんですが、これをやる際に大きく長いイベントを執筆するのに物語を細切れにすることを覚えました。DQでも、物語を細切れにすると、たくさん通過しなくてはならないチェックポイントですが『今日はチェックポイント1へ向かうまで』『明日はチェックポイント1のイベント』『明後日はチェックポイント2へつながる話』とその細々としたところで起承転結みたいなものが見えるようになりました。
 これらを積み重ね長い一つのイベントを完結させます。
 ただし、稲野は長い話を書くのは好きじゃないです。
 そのため、一つのイベントに対して執筆の範囲を決めることが何よりも大事になっています。
 つまり『町に到着』『町の混乱や問題の認識』『問題への対処』『ボス攻略』『攻略後の町のその後』とざっくり分けられるイベントの流れですが、これのどこから始めるか、もしくは終わるかが大事です。だいたい私は『町の到着』は省き、『問題の対処』をしている流れで読者の皆様に問題を認識していただきつつ、ボスを転がします。
 この範囲が狭ければ狭いほど、チェックポイントは少なくなるのでドラマ性を挟むことができます。
 一番、露骨な例えで見せるならDQ9『切なき想い』なんて如何でしょう。
 http://openbox.chakin.com/text/dq9/dq9_11.html
 初っ端からボスダンジョンの前からスタートで、サンマロウでのイベントは切捨てです。ただし、誘拐されたお金持ちのお嬢さんがいる、助けに来たという流れを会話から知ることで『問題の認識対処』が提示できています。そしてなんと、この話『ボス攻略』『その後』がないです。ボスは倒されるって流れさえ見せれば、ボス攻略なんて必要ないという稲野のものぐさの集大成です。そのかわり、この話は主人公であるアインツとサンディの会話が中心で、非常に悠久の旅団の話の核心に触れています。つまり冒険譚としては薄いでしょうが、ドラマ性を盛ったお話となるのです。
 二次創作とは原作と、二次創作の執筆者の個性であるドラマ性のバランスが大切だと思っています。どちらに偏ってもイイ作品にはなりません。原作に忠実過ぎれば『プレイ日記と変わらない』、執筆者の個性が強すぎれば『この原作でやる必要はない』となるのです。いかにバランスよくできるかが、難しくも楽しいところでありましょう。

 逆に星のカービィ系はとにかく『ボス攻略』しかないくらいチェックポイントありません。ぶっちゃけ困るレベルです。
 星カビ系で私が重点を置いているのは『物語の要』です。
 全ての話には『物語の要』があるのですが、カービィはチェックポイントの少なさを『要』への布石で補う必要があるので特に重要です。ちなみに完結した初代の話の要は『大王は悪いやつじゃない』です。この要で統一感を出すために、布石や演出を作り出していきます。
 チェックポイントがないので『朝の連続ドラマ方式』が使えません。一気に流れるように完成できるかどうかが、出来具合の良し悪しに直結します。ただし、この星カビ系は細かい設定がないぶん、短い話やオリジナル設定『ポップスターの名所シリーズ』とかに発展できるので、DQにはない世界観を作り出す楽しみがありましょう。

 TOV小説などは逆にチェックポイントがなく、『こんな話が書きたい』という核の部分を中心に物語を構成します。お弁当でいう 卵焼きが好きだから卵焼きしか食べない みたいな感じです。
 『こんな話が書きたい』が思い浮かばないと、全く書けない類の話であります。『こんな話が書きたい』を最大限魅力的にするために、一つの話を構築して行くタイプの執筆を求められます。これが一般的な二次創作の書き方なんだろうなぁ、とか思って楽しく執筆してます。
 発狂するような爆発的執筆はこの形式となることが多く、これらを連ねて世界観を深めていく執筆形態といえましょう。