アーゼは世界に降臨する

 真っ白い美しい猫と淡く光る佐々木の魂に手を伸ばしたが、届かずに掻き消えた。
 なんてことだ。シルフィニア様が生きておられた。いや、目の前で死ぬのを見届けた。生まれ変わって、俺のように記憶を持ったまま来世を生きていたのだ。この世界に復讐しに戻ってきたというのか? シルフィニア様はこの世界を恨んでいたのか? 驚きに速鳴る心臓を沈めながら、光の残滓が残る空から視線を下ろす。
 ぐったりとした佐々木は、まだ暖かく息がある。死んではいないのを腕の中で感じていた。
 びくりと、思わず肩が跳ねた。
 漆黒の外套の内側が闇に沈んでいる。佐々木がバルダニガやアーゼと融合している状態のまま、それ以上に濃い闇が外套の内側に蠢いている。ランフェスバイナが視界を染めるほどに強く光り、言葉が脳を貫く。
『逃げろ、ファルナン! ミアリアーク!』
 闇が爆ぜる。俺は思わず佐々木を離してしまうと、佐々木は膨れ上がる闇の中に沈んでしまう。手を掴もうとした体が、大きく後ろへ引かれる。タシュリカに乗ったトーレカが俺を掴んで、舞い上がったのだ。
 トーレカがタシュリカを旋回させる眼下で、瞬く間に闇が大きくなっていく。森を呑み、山を覆い、空に迫るほどに巨大化していく。嫌な予感しかしない。俺とミアリアークは無言でそれらを見下ろしていた。
『これが目的だったのか。おのれ…』
「一体、どうなってるんだ? ササは、どうなっちまったのさ?」
 ようやく口を開いて漏れた悔しげな言葉に、トーレカが訊いた。
『融合の状態で器の魂が失われてしまうと、器は空になる。器の理性に包まれて顕在するバルダニガもアーゼに呑まれ、獣の神を抑えることはできなくなるのだ』
 ランフェスバイナが呟いた。
『アーゼ王国が滅んだ原因。獣の神の降臨だ』
「魔王が現れたからじゃないのか?」
 俺がランフェスバイナを風から庇ってやりながら尋ねると、トーレカは呆れたように笑った。
「ランフェスバイナでは、そう伝わっているんだな」
 トーレカはタシュリカを繰りながら、眼下を悔しげに見下ろした。
「アーゼ王国の王が器だった時、獣の神に喰われたんだ。神の器は最終的に神に喰われる。喰われて狂う前に殺すのがアーゼの習わしなんだ。初代ナシューム様は数百年と持ち堪えていたし、どんな器も十年近くは理性を保てる。人間の器がたった数年で、獣の神に喰われてしまうとは誰も思っていなかった」
「喰われる…? 殺される、習わし?」
 イゼフも佐々木も獣の神に喰われてしまうのか? イゼフは狂いそうになる前に、トーレカやアーゼの民の誰かに殺される運命だったのか? そんな素振りは見えなかった。イゼフは戦場では冷酷なまでに冷静であったし、アーゼのために戦っていた。佐々木も喰われるのか。あんなに穏やかなのに? 俺の不安を感じ取ったのか、ランフェスバイナが仄かに光る。
『バルダニガの名を与えてからは、侵食の速度は落ちている。人の生の時間くらいなら、先に天寿を全うできるだろう』
 だが。ランフェスバイナは言葉を続ける。
『アーゼにバルダニガの基礎になる、『親愛』を授けた代償は大きかった。器は想像を上回る速さでアーゼに侵食され、魂を呑まれてしまったのだ。融合と魂の喪失が同時に起きてしまった』
「勇者が器を殺したことには感謝しているが、ランフェスバイナは獣の神への信仰を改革しよう介入してきたんだ。アーゼを変えようとする動きに、アーゼの民は抗った。つい最近まで続いた戦争が始まり、アーゼ王国は存続できず5つの自治領に分かれたんだ」
 見る角度が違えば、内容も異なるのだろう。俺は伝説の魔王の真実を聞いて、愕然とする。
 しかし、今はそれが重要なことではない。今まで黙り込んでいたミアリアークが口を開いた。
「どうしたら、止められるのですか?」
『止める方法は3つ。一つは融合の核となっている、器を殺すこと。二つ目は器とアーゼが接触できぬよう引き離すこと。最後の一つは、器に魂が戻り主導権を取り戻すことだ。だが、アーゼ王国が滅んだ際も勇者が器を殺して止めた。選べる選択肢は、殺すしかない』
 ランフェスバイナは膨らみ続ける闇を見下ろした。声に、僅かに同情が滲んでいる。
『理の外であってもバルダニガの器になってしまった段階で、運がなかったと言えよう』
「そんな…!」
 俺は歯噛みする。ランフェスバイナの言葉を叩き潰すように、声を荒げた。
「佐々木さんを殺すわけにはいかない…!」
『器を殺さずにアーゼを止めるのは不可能だ!』
 ランフェスバイナも俺を刺すような光で、言い返してくる。
 分かっている。分かっている。目の前で今も膨れ上がる闇は、もうすぐ世界を滅ぼす脅威になるだろう。今、手を打たねば世界中が危機に瀕する。最も近いアーゼ自治領はひとたまりもないだろう。
 それでも、佐々木を殺したくない。俺が佐々木を巻き込んでしまわなければ、こんなことにはならなかったと後悔が浮かぶ。後悔は後回しだ。アーゼを止める方法は3つ。本当に殺すしか選択肢がないのか、考えるんだ…!
「諦めるわけにはいかない。考えろ、考えるんだ。なにか、何か方法があるはずだ…」
 剣の柄を強く握り込み、考える。
 アーゼと佐々木の肉体を引き離す。難しいだろう。日食の状態にされてしまえば、闇に閉ざされたこの世界の隅々にまでアーゼの手が及ぶ。例えタシュリカに飛んでもらっても、他の神に加護を賜ろうとしても、道中で捕まる可能性がある。
 佐々木の魂を取り返す。佐々木はどこへ連れて行かれたんだ? 闇雲に探しにいくほどの時間は残されていない。
 脳裏に残った殺すという言葉。掴めと言わんばかりに目の前をちらついてくる。
 佐々木の家族は透しか知らない。両親は存命のはずだ。どう説明すればいいのだろう。トーレカが預かった佐々木の眼鏡を渡して、どんな顔をして佐々木の死を伝えればいいんだ。俺のわがままで、俺の無力で、来世の世界で安穏と生きていられたはずの佐々木は死んでしまう。
 ……来世。来世の世界。俺は引っ掛かった言葉を繰り返す。今手放しては行けないと、意味はまだ分からないが強く思う。
 プランパスは言った。来世の世界にいた佐々木は、ランフェスバイナ王国を滅ぼしたかどうか確認することは出来なかった。プランパスを含めた神々は、理の外の世界に干渉できないんじゃないか?
「来世の世界…理の外!」
 俺はランフェスバイナに向かって、早口で捲し立てる。
「理の外に器の肉体を持っていったら、流石のアーゼも追ってこれないんじゃないのか!?」
 光る蜥蜴は真っ青な瞳を瞬かせて、ちろりと舌を出し入れした。
『むう。可能性はある。暴走に近い状態では、理を超え世界を跨ぐ高度な制御はできまい。そもそも器が居なければ、維持もできずに自壊する。強大なアーゼでさえ例外ではない』
 目蓋を何度か上げ下げし、首を巡らせる。ランフェスバイナは俺の提案を最も効率が良いと判断したのだろう。納得したように気配が穏やかになると、首を伸ばして眼下の闇を見下ろす。
『問題はアーゼが器を呑んでいる、今の状態だ。器をアーゼから切り離さねばならない。そうすれば、ファルナン、貴様が本来いる世界に連れていくことができるだろう』
 問題が解決したと思ったら、次の問題だ。さっき、俺が無理だって思ったことじゃないか。
「アーゼと佐々木さんの肉体を分断するだなんて、どうすればいいんだ…」
『我とファルナンが器の傍にいるなら、一瞬切り離せば十分だ』
 一瞬。一瞬で良いって言ったって、どうやって切り離すんだ。やはり俺は体を動かすのが性に合ってる。知恵熱がでてしまいそうだ。
「ファルナン。貴方はその方法を知っているわ」
 ミアリアークの声が凛と響いた。
 俺もトーレカも、弾かれるようにミアリアークを見る。ランフェスバイナでも最も美しいと言われるほどの美女は、自信に満ちた笑みで俺を見ていた。その笑みを見ていると、全てが上手くいく気がしていた。彼女が窮地を切り抜ける時、いつもその笑顔が導いてくれていた。
「貴方が、いえ、前世のファルナンがイゼフと差し違えた時、貴方は何をしたか覚えてる? 貴方はイゼフからバルダニガの器としての力を奪ったのよ。あれと同じ事をすればおそらく…」
『いや、無理だ』
 なるほど! と思う間もなく、ランフェスバイナが否定した。
 どうしてなんだよ、良い案じゃないか! 前世の俺が死際に放った力は、ランフェスバイナの祝福とシルフィニア様が授けてくれたものだ。今なら、それはランフェスバイナの力だとわかる。どうして無理だって言うんだよ!
『あの時の我と、今の我では力が違いすぎる。器から能力を剥奪するほどの力を、ファルナンに授けることは不可能だ。だが、可能性としては最も現実的だ。一瞬でもアーゼと器を分断することはできる』
 一瞬。佐々木を来世に連れ出すために必要な時間だ。十分だって言うなら、望みはある…!
「よし、早速やってみよう…!」
 腰を上げようとした俺の耳を、蜥蜴が噛んだ。うっ! 変な感触に力が抜ける!
『ファルナン。今言ったではないか、貴様にイゼフを封じた力を授けるのは不可能だと。前回とは違う方法が求められる』
「え? でも実現できるって…」
 噛まれたというか、はむはむされた耳を乱暴に擦る。ランフェスバイナは目を尖らせて俺を見上げる。
『どうすれば良いのかも分からずに、アーゼの中に飛び込むな。貴様の悪い癖のようだ。先が読めぬ闇に飛び込む以上、手順を把握し、淀みなく遂行せねばならぬ。良いか。我の仮初めであっても器になった貴様は、構築する全てに我が力が微弱でも宿っている。それを器に流し込むのだ』
「も、もう少し具体的にお願いします」
 呆れた溜息を漏らされた。
『やはり、成すべきことを把握しておらんかったな。最も難易度が低いのは、息を吹き込むことだろう』
 え。
「なるほど。私の水で溺れそうになったのを見ると、アーゼと融合しても器は人間のまま。息を吹き込むことで、ファルナンの呼気に含まれたランフェスバイナの力を、ササの体に巡らせることができる。そうすれば、内側からランフェスバイナの力が満ちて、アーゼを一瞬でも引き剥がすことができ…」
「ちょ! ちょっと、待ってくれ! そ、それって、俺が佐々木に、キ、キスをするってことじゃないか!」
 俺は声を張り上げて、淡々としたミアリアークの説明を遮った。
 無理だ。無理だって。だって、相手は佐々木だぞ。高槻守が最初に会った時には、もう大人って感じの年齢の人だった。洒落っ気はなくて、男物の服を好んで着ていた。正直、友人や同僚としては良い人だが、恋人や伴侶として見れそうにない。前世のいざこざがあって関わりは増えたが、異性として意識は全く持てない。そう、異性って感じがしないんだ。
 しかもイゼフの来世なんだぞ。近藤美亜を巡る、ライバルだ。なんでキスをしなきゃいけないんだよ!
 いやいやいや、そこじゃない。もっとシンプルでいいんだ。
「俺はミアリアーク一筋なの! 他の女…いや、その佐々木は特に嫌だ!」
 トーレカが俺の肩にぐるりと腕を回した。すごく怖い顔が俺を覗き込んでくる。そうだ、こいつ、イゼフの息子だった。
「息を吹き込むだけだろ? 接吻とは違うじゃんか。ササを救おうってんなら、つべこべ言わずに息を吹き込んでこいよ」
 いつも気怠げな表情が抜け落ちて、凄みのある感情が顔を覆っている。思わず、生唾を呑んだ。
「良いか、ファルナン。溺れた奴を助けるのと同じだ。死にそうな奴を生かすためなら、男だろうが女だろうが子供も老人も敵味方すら関係ないんだよ。…親父だけじゃなくササまで殺したら、俺はお前を許さねぇぞ」
 俺の手をほっそりとした手が取った。ミアリアークがまっすぐ、俺を見つめている。
「ファルナン。貴方ならササを助けてくれるって信じてる。お願い。ササを助けて」
 う。
 拒むことは出来ない空気だった。いや、俺が佐々木を殺したくないと願っているのだから、佐々木を生かすための選択肢を拒むこと自体が出来ないのだ。ファーストキスじゃないんだ。トーレカの言う通り、人工呼吸と割り切らねばならない。
 佐々木を取り戻せば、世界は救われる。俺がやらねばならない。
 立ち上がって拳を握る。気合を入れないと行けない気がする。
「わかってる。佐々木さんは、必ず、助ける」
 俺は剣を抜き放ち、ランフェスバイナの力を宿す。刀身が輝き、体もうっすらと光っている気がする。俺がランフェスバイナを見やると、小さい蜥蜴は首元の隙間にするりと入り込んだ。顔だけ見せると、ちろりと舌を出し入れする。
 闇は相変わらず膨れ上がり、広大なアーゼ・ナシューム全域を飲み込むほどに肥大していた。
 深呼吸を一つして、剣を抱き込むようにしてタシュリカから飛び降りた!
 落下の感覚は闇に突入した時点で消えていた。ランフェスバイナの力で光り輝く剣と、その力を帯びている俺の体だけが闇の中で浮かんでいるように見える。何も見えない闇だったが、体は下へ下へと沈み込んでいるのがわかる。光が闇を貫いて、奥へ奥へと突き進んでいるようだった。
 どれくらいそうしていたのだろう。何も変化しない闇の中で、時間の感覚はあっという間に狂った。
 長かったような短かったような、もしかしたら静止しているかもしれない中で変化を感じた。ふと、鼻先を水と緑の匂いが掠める。そう認識した瞬間、足が地面らしいものに触れた。目を凝らすと、柔らかい草が生い茂った地面を踏み締めている。頭上を新月の星空が覆い、木々や建物の影が黒く切り抜いている。爽やかな風が心地よく過ぎ去っていく、良い夢が見られそうな夜だ。
 見覚えがある。ここは…
「アーゼ・バルダニガ…?」
『違う。アーゼの神域。心の最奥だ。こんなところだったとはな…』
 バルダニガが寝床にするという巨木へ歩み寄ろうと進んで、俺はぎょっと足を止めた。草原の上に何かが寝転がっている。剣を構えてにじり寄れば、それは太古からいる小動物だ。愛らしく、温厚な性格なので、ペットとして人気がある。ふわふわした毛皮が、ゆっくりと上下しているので眠っているのだろう。
 大きな存在の気配もする。剣を掲げて照らせば、大きな竜が巨木を取り巻くように身を横たえている。見回せば様々な動物が巨木の周囲で眠っていた。人間もいた。草の上で寝るような身分ではない豪華な身形の若い男は、穏やかな顔で眠っている。
 なんなんだ。これは…。異様な光景に息が詰まりそうになる。
 巨木の根本を目指している道中で、俺は竜将軍として見知った、黒づくめで冴えない中年男を見つけた。イゼフもまた、目を閉じて眠っている。肩に触れて揺すってみたが、起きる気配はない。
 ランフェスバイナは一言も喋らず、目の前の光景を眺めているようだった。眠っている動物達を踏まないように進むと、ついに根元にたどり着いた。落ち葉でふかふかになった根元に佐々木が横たわり、バルダニガによく似た黒い獣が寄り添っている。獣がゆっくりと顔を上げた。
『ランフェスバイナ…』
 佐々木の胸の上に前足を乗せた黒い獣が、弱々しげに話しかけてくる。
『俺は…無知で愚かなままがいいよ。知れば知るほどに苦しい。誰かの苦悩を、誰かの憎悪を、誰かの歓喜を、誰かの愛情を、どうして教えてくるのだろう? 俺は知らないままで、いいじゃないか。知らなければ、俺は何を壊したって苦しくならない』
 泣いているのだろうか? この場では何者よりも黒く濃い闇は、すんすんと鼻を鳴らしている。
『なぁ。ランフェスバイナ。お前なら、俺を殺せるだろう? ここを、壊せるだろう?』
 剣を持っている俺の右腕の上を、ランフェスバイナは滑らかに進んだ。甲の部分で止まり、闇を覗き込む。
『死なせるものか。壊すものか』
 厳しい声色は硬質な光で辺りを照らした。たくさんの穏やかな寝顔が、闇から浮かび上がってくる。
『貴様は償っていかねばならない。お前に苦しめられた数多の命が報われるまで苦しみ抜け。楽になどさせぬ』
 闇は項垂れる。佐々木の胸の上に顎を乗せて、力なく横たわる。
『アーゼ。貴様はなぜ言葉を喋れる。なぜ、壊して苦しむ。知るのが辛いのだ? 全てに耳を塞ぎ目を閉じれたはずだ。なぜ、そうしなかった? 楽しかったのだろう? 満たされたのだろう? 貴様に寄り添うことを決意した魂と、共に過ごした時間は貴様にとって替え難いものであったはずだ』
 ランフェスバイナはアーゼを理性と知性のない存在だと言った。だが、ここに眠っている全ての生き物は、きっと、アーゼの器になった者達なのだ。アーゼの心の奥底で穏やかな顔で眠っている彼らを見ると、アーゼが彼らをいかに大事にしているかがわかる。
 光は毅然と、同じ明るさを周囲に投げかけた。ランフェスバイナは俺の手から滑るように降りると、佐々木の上に乗ってアーゼを正面に見る。
『我は貴様を殺さぬ。死なせぬ。貴様を善き神としたい、全ての命の願いを我は諦めぬ』
 至近距離の光に、アーゼは体を起こし佐々木の胸から前足をどかした。
『器は持っていく。良いな?』
 ファルナン。そう光が呼びかける。佐々木の傍に膝をつくと、獣と向き合う形になる。バルダニガのように闇は俺を見ているのがわかる。力だけはとてつもなく強いのに実は臆病な獣の神に、俺は励ますように笑いかけた。
「大丈夫。俺が佐々木さんを必ず助けるから。また、貴方と遊んでくれるよ」
 闇はぱたりと尻尾を振った。穏やかな雰囲気が闇を暖かいものにする。
『ササ、海に連れて行ってくれるかな? そうなったら、嬉しいな』
 俺は小さく頷いて、佐々木の顎に指を掛ける。もう片方の手を額に当てて、両手で大きく顎を上げて仰け反らせる。人工呼吸。これは、人工呼吸なんだ。佐々木の鼻をつまむと、俺は大きく息を吸いこんだ。