おかめさんのアレフレッドさん×アレフ 友愛の空騒ぎ


■ 誰そ彼と舞う ■

 あいつは何を考えているんだ…!
 思い返しただけで、その瞬間に戻ったかのように鮮明に怒りが込み上げて来る。その影響ですっかり同業者達は怯え切っていた。アレフはいつも不機嫌で素っ気無いが、なぜあんなに苛ついているんだマジで怖い。そんな言葉を耳にする。
 あぁ、俺だって怒りたくて怒っている訳じゃない。
 別にお前達に怒っている訳じゃないんだ。そう、弁明はするんだが、視線を外した次の瞬間には殺意すら滲ませた怒気を抑える事は出来ず、目の前の仲間達が震え上がる。俺のこの癇癪じみた感情が、らしくないのは俺自身が十分に理解しているのだ。仕事に支障を来すなんて、感情を持て余して制御出来ない事を示すばかりで頭を抱えていた。
 本当に何を考えているんだ。
 怒りの発端となったのは、もう数日前の話だ。
 人目を気にしたのも、俺の疲労を労ったのも、ラダトームからメルキドまでの歩数分譲歩して理解してやろう。だが、処理を他人にやってもらう必要が何処にある? 男ならば自分で処理が出来る。他人に面倒を見てもらう必要等何処にあるのだ? アレフレッドのお節介に、手足を斑蜘蛛の糸で拘束された屈辱が相まって頭が真っ白に成る程の怒りが込み上げて来る。
 もし、これが逆の立場なら俺はどうするか。
 簡単な事だ。朝方それを見たら肩を叩いて起こして、繁みを指差して送り出し、朝飯を用意しながら戻って来るのを待つだけだ。
 なぜ、奴が自分で処理を買って出たのか、俺には全く理解できなかった。その直後には激しい言葉を叩き付けて別れたのだ。仕事とは無縁の関係だったからとはいえ、魔物も出る人里離れた空間で、例え腕が立つと言っても単独行動を感情で決めてしまった事に驚きは隠せなかった。
 動揺しているんだろう。一仕事を終えてレミーラの光で淡く光る街灯に、光と闇を区切られた町をのんびりと歩く。居酒屋も最初の宴が徐々にお開きになる時刻だった。寝る間も惜しんで仕事にのめり込んだ為に、小さく欠伸が漏れた。流石に何も考えずに眠る事が出来るだろう。
 気持ちを切り替えねばならない。これ以上、仲間に迷惑を掛けられねぇ。
 それにアレフレッドのとんでもない行動に怒るのは、今に始まった話ではないのだ。
 アレフレッドとの出会いは、割と幼い頃だった。
 俺はラダトーム城下の郊外にある孤児院で育ったが、ガキの頃から手伝い等をしては小遣いを稼いでいた。要領良く動き、仕事を覚えた俺がラダトーム城下の外に出たいと願う事は自然な事だった。都会の人間は孤児を見下していたからだ。商家の手伝いの伝手で護衛の傭兵と出会い、俺は傭兵としての人生を歩み出す。齢は10かそこらだったろう。
 馬の世話や、武器の手入れ、安い品の流通経路に仕入れ方、居酒屋で働いた経験から料理も上手だった俺を、傭兵達は可愛がってくれた。実践に出られるのはまだまだ先だったが、戦い方を教えてくれて簡単な護衛の仕事に同行させてくれた。俺は戦いしか知らない男達を支援する術を、その時には十分に知っていたからな。
 そんな時、とある農村の魔物退治に同行した。
 農業の盛んなごく有り触れた村。それぞれに自警団が居るが、魔物が活発になる時期は自前の戦力だけではどうにも対処出来ない。村がいくつも滅ぶような大きな災いにならなければ、国は動かない。それなりの金は掛かるが命には換えられないと、村では定期的に傭兵を雇っていた。俺の初の遠出として連れ出してくれる程、傭兵達にしてみれば簡単な仕事だった。
 その村で出会った歳の近い少年が、アレフレッドだった。
 俺から見れば、アレフレッドは凄い男だった。俺も筋が良いと言われていたが、アレフレッドは農民でも戦士の家系だったのだろう。魔法も剣術も大人顔負けの実力だった。
 逆にアレフレッドは都会からやって来た俺を、多彩な才能の持ち主だと褒めた。確かに、大工の棟梁や鍛治師の手伝いをした関係で、様々な農耕機具を鋳直したり、農村ではなかなか口にできない料理をしたりして喜ばれた。
『それが出来たからって、なんなんだ』
 俺達が互いに顔を見合わせて、口にした言葉は同じだった。俺はアレフレッドの戦闘技術を羨ましく思ったし、アレフレッドは俺の様々な技術が村の為に活かせるだろうと羨んだ。無い物ねだり、他人の物は良く見える。年齢の近さから、それなりに親しくもなっただろう。
 ただし、俺に魔法の才能があるからって監禁に近い状況で魔法を教えようとしたり、ロトの話を朝が来るまで聞かせるのは拷問だった。魔法は俺に才能が無いのだと、覚えるのは捨てているのだと、理解させるのに丸一日を費やしたがあいつは納得しちゃいない。俺にはとても勇者とは思えぬロト像を目を輝かせて語り聞かすのを止めるのは、五度目で諦め居眠りをしてやり過ごした。殆ど覚えさせられてしまって、叩き起こされようが聞き流してしまっても全く問題なかった。
 今思えば、アレフレッドはその時点で変な奴だった。融通は利かないし、信じている物に対して一直線だった。角度が違えば物の見方が違うように、俺が指摘した簡単な事すらアレフレッドは目を丸くする。悪い奴ではない。純粋過ぎて清いくらいだ。
 それが長く続く訳がない。
 アレフレッドは案の定強くなり、自警団は傭兵を雇う必要が無くなった。
 俺は経験と実績を積んで一人前になり、ラダトームとメルキドを往復する護衛の傭兵として働くようになった。
 お互いの運命は、もう二度と交わらないと思っていた。アレフレッドが王宮勤めになるまでは。
「アレフ!」
 息を弾ませ、アレフレッドが駆け寄って来た。
 整えた金髪に銀のサークレットと美しい宝玉が目に付く。赤い衣を翻し、剣が軽やかに踊る。整った容姿に眩しい笑顔は、光り輝いて邪悪すら滅ぼせそうだった。彼が勇者と呼ばれるなら、なるほど、たしかに、そう思わせる真っ直ぐな魅力があった。
「君は早いな!全然追い付けなかったよ!」
 獣道をも知り尽くした傭兵の俺が最速で移動したんだ。街道を駆ける馬ですら、場所によっては追い付く事はできない。
 いつも、何故かアレフレッドは俺を見つけて来た。俺がアレフレッドを見つけるのは難しくないだろう。美男子で真っ赤な装束だ。人波のど真中でさえ、金の花粉をまき散らす炎石楠花のようだ。だが、俺は極一般な傭兵の装いだ。深紅の外套は汚れにくすんで灰色のようだったし、鎧は一般的な黒に塗装された鉄の鎧だ。容姿だってアレフガルドでは有り触れた姿に違いない。
「金輪際、俺に関わるなと言った筈だ」
 俺は真冬のガライの海風のような声で言い、アレフレッドから視線を外して歩き出した。
「君は凄く怒っているけど、俺は君にそんなに悪い事をしたのか? 俺は君の尊厳を守るために…」
 振り返り様に俺の拳が真っ直ぐ端整な顔に突き刺さろうとしたが、寸での所で顔はずれて金髪を掠めただけだった。俺の腕をアレフレッドはさっと掴み、筋を違った方向に違えて動きを封じようとしたが、俺が脇腹に放った蹴りで手を離して後ずさる。
 アレフレッドが怪訝な顔で俺を見た。
「君がそんな事を言う、理由が分からない」
 俺がお前を信頼して隣で寝ちまったのが、最大の失態で理由だな。アホらしくて言う気にもならん。
「知る必要も無いだろう」
 俺の言葉にアレフレッドの瞳に燃えるような光が灯った。俺はそんな真っ直ぐな視線から目を逸らし、踵を返した。
 足下で蟠っていた夜気が、さっと吹き払われた。
 鞘の内側を走る刃の音が、冷え始めた風の音のように鋭く響く。月下に抜き放たれた白刃は、片方は闇の中に潜んでいた星の光に白く、片方は街灯の明かりに黄金に輝いた。金属同士が打ち合わさる音が、周囲の空間を全て押し退けた。薄氷の上の舞踏のように、互いに忙しなく入れ替わり刃の下を掻い潜って相手の喉元に刃を突き立てようとする。がっちりと鍔迫り合い、互いの瞳に凍り付いた闘気を間近に見る。
「そんなことはできない」
 アレフレッドの瞳が魔力に不思議な光を帯びる。
 俺は僅かに目を細めた。この至近距離では避けられない。急いで剣の握りを変え、呪文を中断させる程の痛手を加えなくてはならない。
 構えを変え、呪文の中断を最優先にした為に崩れた姿勢の外側から、アレフレッドの長い腕が迫った。
「君とは時間を掛けて話す必要がある」
 肩を刺し貫いたというのに、逆に俺がアレフレッドに抱きすくめられる形になる!ちょ!何してんだお前!
 耳元で囁かれるのは、眠りへと誘う呪文。
 動揺にするりと呪文は入り込み、疲労した身体は糸でも切れたかのように力なく崩れ落ちた。がらんがらんと落ちる剣の音と、身体を支える強い力を擦り抜けて、意識が落ちて行く。本当に、なんで放っておいてくれねぇのかなぁ? 疑問の答え諸共、眠りに呑まれて消えて行く。


■ 日を跨いで触れる ■

 黒鉄の装甲にメッキの禿げた錆色の縁取りの量産され至上に出回る鉄の鎧が、綺麗に磨かれ俺を写した。金髪に明るい色の瞳が、薄暗い室内に灯された小さな明かりと黒い金属でぼんやりしている。俺は妻が洗ってくれた柔らかい部屋着の肌触りを愛おしく感じながら、アレフの鎧を丁寧に部屋の片隅に纏めた。
 傭兵として世界を駆ける彼の荷物は、想像以上に重かった。アレフは平均的な男性の身長でやや細いくらいなので軽いが、荷物は彼自身の体重と変わらぬ程だった。これで食料が入っていたら、更に重いのだろう。彼の仕事の過酷さが伺える。
 ラリホーで眠りに落ちた彼を背負い、近くの宿に部屋を取った。2部屋借りようと思ったが、疲労していた彼に思った以上に睡眠が深く作用したらしく昏睡に近かった為に同室にする事にした。ベッドに横たえると、俺は寝苦しいだろうと思って彼の鎧を脱がせに掛かった。
 これが、想像以上に難航した。傭兵として激しい動きを余儀なくされるからか、傭兵独特の結び目や巻き付けがあり金具を一つ外すのも苦労した。アレフは仕事中は勿論、町に居ても仕事の延長である限り鎧は脱がない。だから俺は鎧を脱いだ彼の姿が新鮮だった。
 黒鉄の鎧の下は、橙色のタートルネックの長袖だった。明るい橙色と濃い茶色のズボンはゆったりとしていて、彼の筋肉質な肉体が柔らかい生地から浮き出ていた。服は血の染みがこびり付いていたが、橙色は上手く暈している。
 ベルトを外し、怪我の確認する為に上の服を脱がせると、俺は思わず息を呑んだ。
 いつも長袖を愛用している彼の素肌は、想像以上に白かった。ドムドーラ大砂漠を通過する旅人は、太陽に肌を灼かれない為に長袖を着込む。俺も彼がドムドーラ経由のメルキドの護衛を主に担っているからだろうと思っていた。
「酷いな」
 思わず声が漏れた。
 彼の身体は傷だらけだった。大きいものから小さいもの、魔物による引き裂かれたもの噛み付かれたもの貫かれもの、様々な傷が無数に刻まれている。毒のせいか不気味な色の染みも見られた。中には大きい傷に更に傷を重ねて深くなっているものもある。どれも回復呪文を施しても、完治する事はない古い傷跡だった。
 彼は盾を使わない。
 アレフは元々、危険と髪一重で戦場を掻き回し、敵の懐に躊躇いなく飛び込む戦い方をする。敵の骨を断つ為なら、自分の肉が切れる事を怖れない。俺は彼に命を大事にして欲しいと何度も頼んだ事があったが、聞入れられる事はなかった。死ぬ事に躊躇いがない、命が惜しくないと考えるには理由があると思っていたが、ここまで傷を重ねてまだ生きているのを見ると、本当は誰よりも生きたがっているのかもしれないと思う。
 そう言えば、俺は彼が湯浴み等をしているどころか、着替えている場面すら見た事がない。同性でしかも戦いに従事する俺ですら、思わず目を逸らしてしまいそうな身体だった。彼は余計な心配をさせまいと、その荒々しい気性の割に細やかな心配りをしているのだろう。
 すっと深い傷に指を這わす。抉られたまま塞がれた肌よりも滑らかな不自然な曲線の下を、熱が脈打っている。
「ん…」
 傷は神経に近いから敏感なのかもしれない。ベッドに横たわっているアレフが身じろいだ。睫毛が震え、唇が呻き声と共に吐息を吐く。目が開いて、ぼんやりしていた瞳が室内の光を吸い込んで明るい茶色に輝き出す。きつく刻まれた眉間の皺が、今の状況を把握して不満なのだと分かる。
 微笑んでみせる俺に、アレフが口を開いた。
「今回は斑蜘蛛の糸で拘束はしなかったようだな」
「話をするのが目的だからね」
「俺は話す事はない」
 そう言うと思った。
 アレフは元々気難しい性格だから、俺が察する事の出来ない事で機嫌を損ねてしまったのかもしれない。彼の場合は言葉よりも、行動で示した方が受け入れてくれる事が多い事を俺は経験で知っていた。
 俺は微笑みを消さずに、アレフの下腹部に乗せていた手を脚側へ下げて行く。
 ぐっと、指先に力を込めて押す。皮膚に俺の指が食い込んだ瞬間、変化は明らかに現れた。
「いっ!」
 アレフが仰け反り、咄嗟に自分の手で口を塞いだ。
 俺も思わず驚いた。どんな怪我を負っても、アレフは悲鳴を上げた事がない。どんなに強く打ち据えられても、切り裂かれても、彼は悲鳴一つ上げる事なく、攻撃を中断する事もない。そんなアレフの悲鳴聞いて、俺は思わず心臓が飛び出る程に驚いた。まだ余韻で心臓が高鳴っている。
「痛かったかい?」
 アレフ自身も驚いたようで、信じられないと僅かに見開いた目が涙に潤んでいる。俺は高揚する気持ちをどうにか抑えて、努めて平静に言葉を紡いだ。そう、彼を苦しめる為じゃない。今回は本当に彼の為に、彼が喜ぶだろう方法をしようと思っているのだ。
「すまない。次は痛くないはずだ」
 動揺している隙にアレフをうつ伏せにし、その背を押さえつける。まだ、ラリホーの余韻があるのか、跳ね返せる姿勢をあっという間に崩され俺に組敷かれてしまう。太腿の裏に体重を掛け、肩甲骨の上に手の平を落として体重を掛けて押さえつける。
「ま、待て!何を…!う!」
 素早く行為に移る。力を込める度に、アレフの身体が上下に揺さぶられ床が軋んだ。
「やめ…っ!」
 最初は呻き声と共に身体に力を込めて抵抗していたが、徐々に呻き声は小さくなり俺の動きに従順になって行った。硬い部分を押せば、アレフは心地良さそうに声を漏らした。身体が触れている部分の体温が互いに高くなり、互いの短い呼吸が重なり合うのを耳で聞きながら、俺は感慨深い想いに浸っていた。弛緩したアレフの身体に触れていると、彼が俺に身体を委ねているように思えるんだ。
 何事にも拒絶を示すような彼が、抵抗せず許容している。
 体術に秀でた彼を組敷いている事が、言葉にし難い感情になって胸を衝いた。
 彼が苦悶の声ではなく恍惚めいた声を漏らすのも、凄く嬉しかった。彼が悦んでいるのだと思うと、俺の事のように悦びが巡る。
 ぐっとアレフが肘を付いて、上半身を起こそうとする。俺はアレフを押さえつける事はしなかった。
 気怠気に肘を立てて身体を捻ったアレフは、瞳を潤ませ熱い息を吐いた。柔らかい髪は肌にしっとりと張り付き、血色が良くなった頬に赤みがさしている。紅の注した唇を湿らす為に、少しだけ出た舌がなんとも艶っぽかった。こんな親友の姿を見れるのは、もしかしたら俺だけかもしれない。俺は心臓が早鐘を打つのを感じた。
「アレフレッド…お前…」
 苦し気に紡いだ言葉、伏せがちな睫毛が持ち上がり茶色の瞳が向けられる。
「すげぇマッサージ上手いな」
 関心しきりの彼の言葉に、俺は頷いた。
「あぁ。かの勇者ロトが感動のあまりに通い、その極意を著した指南書のお陰でね」
 砂漠と緑野の交差点。文明の坩堝。夜の町にて出会ったマッサージ師の余りの技量の高さに、勇者ロトはいたく感動しその極意を身体で学んだと言う。そしてその技術で女性達の身体を癒し、快楽に導いたと巻末には書かれている。身体の凝りや歪みを直す整体術よりも、性的快楽を引き出すマッサージの方が指南書の割合は多いからだ。実際、性的快楽を引き出す内容は男の俺でもヤバかった。
 ちなみに最初にアレフが涙目になる程痛がったのは、足ツボを押したからだ。よほど内蔵が疲れているのだろう。
 起き上がって肩を回し、満足げに微笑む彼の眉間に皺がない。そうさせたのが、偉大なるロトの知恵を拝借したとはいえ俺自身の力だと思うと嬉しくてたまらなかった。
「君の役に立てたようで、とても嬉しいよ」
「お前、俺が許したとか本気で思ってんのか?」
 あれ?
「無理矢理ラリホーで誘拐同然の連行、鎧と上着をひっぺがされ、激痛後に揉み解しとか意味が分からん」
 そう言うが早いか、部屋の片隅に纏めてあった自身の荷物の前にしゃがみ込む。荷物から麻袋を取り出すと、手早く鎧を放り込んで行く。こんな深夜に何処へ行くんだ?
 もしかしてベッドが一つしかないのを気兼ねしているんだろうか?それでもそのベッドは大人男二人が並んで寝ても、密着すれば落ちない広さを持っている。アレフがわざわざ部屋を出て、別に部屋を借りる手間はかける必要なんてない。俺はアレフの袖を摘んだ。
「一緒に寝れば良いだろう」
「お前は棺桶で眠りたいようだな」
 アレフが険しい表情で俺を見上げる。だが、ベッドで寝た方が絶対に疲れが取れるじゃないか。
「良いじゃないか。俺達は親友だろ!」
「誰と誰が親友だ! 気色悪い!」
 拳を突きつけ抵抗するのが戯れ合いのようだ。あんまり抵抗するなら、呪文を使っても良いんだけどね。俺は笑いながら、アレフをベッドに引きずり込むタイミングを考えていた。

 翌日、宿の主人が『昨日はお楽しみでしたね』と微笑んだ。
 本当に充実した楽しい一晩だった。俺は満面の笑みで頷いた。