SFC版DQ1で闇の衣の遺産アレフさんの設定で竜王をぶっ倒す!


■ 概要説明 ■

・武器は鋼鉄の剣まで。ロトの剣装備は認める。
・防具は盾装備禁止。鎧の最高装備は鉄の鎧まで。
・大荷物の防御力をふまえ、竜の鱗の装備は認める。
・ドーピングアイテムはリセット無しで即飲み。
・魔法は一切禁止。道具使用による魔法も禁止(キメラの翼もアウト
・ローラ姫と竜王の所まで行く


■ 最強装備の鉄の鎧を購入 ■

「竹槍の攻撃力舐めちゃいけねぇな」
 そんな事を言いながら、皮の服と竹槍でマイラの山を下る勇者アレフである。
 流石に守銭奴であっても素手で殴って倒せるなんて抜かせる程の、努力と根性の人ではないと言う事でしょう。とはいえ、アレフさんは竹槍でマイラの村まで来てしまいました。そのうち銅の剣でメルキドまで行った伝説も達成してもらいましょう。
「コストパフォーマンスも良いし、悪く無いな」
 びゅんびゅんと鼻歌混じりに進む彼のレベルは5。生き急ぎ過ぎです。
 そんな中、目の前に現れたのはメイジドラキー!攻撃力も然る事ながら、ギラが平均ダメージ11とでかい!
「やべっ!」
 薬草も間に合わず、こんがりさせられてしまったのであった。

 ■ □ ■ □

「いやーーー。アレフ君は本当にお得意さんだなぁ」
 灰髪の医師はそう言って上機嫌に薬草を売捌いておりました。
「先生。魔法のダメージは鎧の守備力貫通して来るから侮れないんだって」
「皮の服でギラが防げるとか考えるアレフ君は異常だね」
 うぐぐ。アレフさんが黙るが、直ぐさま医師に手を突きつける。
「薬草、もう一個くれよ」
「ええ、いいですよ」
 そこで医師は愉快そうに笑った。
「もう薬草いっぱいお持ちでお売り出来ないですけどね」
 そのドヤ顔の頂点に、ぱかーんと良い音立てて竹槍が落ちた。


■ SFC時代の壁(冒険書が消える的意味で)ガライの墓攻略まで ■

「マッピング必要な洞窟は久々だな…」
 と呟いておりますアレフさんですが、私は紙もペンもなく暗記してるんですけど。
 岩山の洞窟が広過ぎて、帰りたいけど帰れない状態が怖いですね。リレミトがないぶんトルネコよりも恐怖感があります。レベルが上がって安定してきたが、地下2階になると魔物がぐんと強くなってヒヤヒヤものです。薬草の残量を気にしながらなので、魔物に倒されそうになる位HPが減ってからでないと薬草は使いません。
「最奥にあるのが戦士の指輪ねぇ。しけてんじゃねぇか…」
 ぶつぶつ言いながらも、これは預かり所にでも放り込んでおくかと呟きながら宝箱を恙無く回収して撤退。途中荷物が多過ぎて持ち物がいっぱいになる事態が発生するが、予備の松明捨てて回収します。意地ですね。
「いざとなったら空気の動きとかで出てやるさ」
 そうですね。アレフさんなら出来そうですね。

 ■ □ ■ □

 リムルダール到着。
「ほい、鍵を一つやろう。ほい、ほい、ほい」
「曲芸じゃねぇんだぞ、爺さん。纏めて売れ!」
 不機嫌大爆発です。

 ■ □ ■ □

「これが墓だとは俺は認めたく無い…」
 それは私も同意します。ガライの墓が広過ぎて、息絶え絶えなアレフさんです。私も脳内マッピングで対応出来ない広さに、頭から煙が出そうです。
「地下に連続で降りるのか…1階でも一撃瞬殺出来なかったから自信がねぇなぁ。だが、飛び込め!」
 アレフさんを追いかけ降りれば、音楽が変わって私悲鳴を上げそうですよ。いやもう、音楽怖い。半端ない。5の洞窟の音楽も怖いよ。でも1は階を下る毎に音楽が低くなるんだよ。ホラーだよ!!
 しかも、リカントとこリカちゃんの攻撃力が半端なく、この階から平均ダメージ10以上という修羅場。薬草の減りが半端ではない。
「くっそー。もう駄目だ。引き返さないと薬草が尽きる」
 撤退を始めたアレフさんの前にのそりと現れたのは、やや黒っぽいドロルであります。たしかメイジドロルとかそんな名前だったでしょう。そのたらこ唇が唱えるんですよ
 ラリホーってさ!!
 アレフさん寝たし!
 起きないし!
 ボコられたし!

「と言う訳で俺は今、修行中なんだよ先生」
「薬草の減りが早いという事は、相当苦戦しているようだね」
 にこにこと灰髪の医師は薬草を売ってくれます。
「今はドムドーラ近辺で修行してるんだ。あそこはなんか滅んじまったらしいな…」
「まーたまた。砂漠の暑さに兜の中が蒸し器になっちゃって、脳が茹だっちゃったんじゃないですか」
 聞いた事ありませんよー、と医師は笑って返すのである。
 しかし私もアレフさんも見たのだ。私は悲鳴まで上げた。
「ドラゴンの爪はマジで痛かったぞ」
 ゴールドマンは堅くて経験値低くてしかも攻撃力も高くて嫌いです。ガライの墓再攻略が遠い。


■ 銀の竪琴手に入れて ■

「あら、アレフさん。最近は御贔屓で結構ですけど、毎回ズタぼろねぇ」
「ははは、これもあのクソ国王のお陰ですよ」
 いや、本当にレベル上げは捗りません。
 薬草尽きてはラダトームやたまにガライへ戻り、宿のお世話になっております。お嬢さんには一度もお声はかけた事はありません。きっと宿代が嵩むからですね。私は数に入りませんので。
 しかし、ガライの宿屋は何処にベッドがあるのでしょう…?

 □ ■ □ ■

 レベルがあれから2つ程伸びて、ガライの墓再攻略。
 結構危なげなく進めます。流石DQ1では最も広く入り組んでいる墓だけあって、全部を回るのには時間が掛かりました。意外に『ここ行ってない!』というのがちらほら出てきて、視界が限られたダンジョンの難しさを再確認。今ではこのレベルのダンジョンはポケモン系にしかないのだから残念です。
レベルが上がった事も関係して、危なげなく最深部に到着。
「これが噂の竪琴か」
 貰うもん貰ってアレフさんは早々に撤退。町に出てひいてみると…
「うーん。まぁ、普通の竪琴か」
 ガライの竪琴は魔物を呼び寄せると言うので、町から出て直ぐにもう一曲。
 しかし、何も起きない。
「うーーーん?」
 首を傾げるアレフさんと私ですが、まあ、雨雲の杖の引換券なので良いじゃないですか。と決着。

 ■ □ ■ □

 勇者の証明たるロトの証をゲットするべく、これからメルキドを目指すのですが…
 鎧の騎士にぼこられたのでレベル上げです(がくり)
 影の騎士もHP低くても回比率が高いので、高い攻撃力に沈む事が(がくり)


■ Lv20と判明する ■

 レベルが上がってどうにかロトの証をゲット! 結構、広範囲に鎧の騎士が出没するので気が抜けません。
 王女の愛とかメルキドのヒント無しでどうしてとか、そんなツッコミはしてはいけません。アレフさんにはラダトームから最も遠い場所にお宝がある〜と枕元で囁いて誘導しましたよ。
 このまま虹の橋を架けて竜王の城の宝箱を漁りたい所ですが、それは薬草の都合で難しい事でしょう。
 次の目標設定として竜王の城でお宝探しをする為に、ドムドーラのドラゴンとかをある程度安定して倒せる程度に鍛える事とします。

 □ ■ □ ■

 で、案外安定して倒せてしまうんですよこれが…。
「強くなったのが良く分かるなあ…」
 悪魔の騎士だったかなんだかも、意外に安定して退治出来たりします。某店の裏にあるという鎧を回収し、そのまま預かり所に放り込む。アレフさん曰く『俺の性に合わない』です。
 あともう1レベルくらい上げて、スターキメラを一刀で退けられるようになったら竜王の城の宝箱漁りにいきます。

 ■ □ ■ □

  そう言えば闇の衣の遺産設定ではアレフさんはラダトームとメルキド間専門の傭兵です。
  メルキドの魔物を一撃で倒せなくとも危なげ無い戦闘が行える程度のレベルに達したので、きっとこのくらいのステータスなんでしょう。


■ メルキドがとんでもない田舎だった ■

 「バリア、痛って!マジで死ぬ!!」
 ちょっくら竜王の城の玄関の戸を叩きに行って来てこれです。
 魔物もまだまだ一撃必殺とはいかないものでHPもがつがつ削られてはいるのですが、最大の敵はバリアですよ。バリアの攻撃力が高くて、世界樹の迷宮のダメージ床なんか結構大した事なかったんじゃないかって思えるくらいです。
 魔物を一撃で倒せる攻撃力をアレフさんが得たとしても、バリアでHPが削られて薬草を2個くらい消費すると仮定する。すると、竜王戦では薬草4つで挑む事になるのだ。非常に勝てる気がしない。
 どちらにしろ、まだまだ宝箱を漁りに行ける程度ではなかったのでレベル上げ頑張ります。

 □ ■ □ ■

「うわわわあああ!脳筋に敗北するなんぞ、俺達は認めん!!」
「ちょ…お前らの調整が弱すぎるんだよボケ! お前らこそ俺に謝罪しろ!」
 という悲鳴が響き渡るメルキド。
 毎日愛情いっぱいにメンテナンスしているゴーレムが、ぶっ転がされた件について技術者一同酷くご乱心しております。
 魔法アイテム無使用ということで妖精の笛も預かり所に放り込まれております。そんな状態で、アレフさんはゴーレムを転がしたのです。
 今までで最大級の被ダメージ44を記録したゴーレムの攻撃力ですが、アレフさんも負けじと一撃50ダメージを叩き込む。しかし、次の瞬間、アレフさんが会心の一撃! ゴーレム沈没と至りました。
 メタルスライムも吃驚の2500の経験値が非常に印象的でした。
「つーかメルキドの店の品揃えをどうにかしろ!!」
 驚いた事に道具屋では一切薬草が売っていないという暴挙。二軒ある道具屋は竜の鱗とキメラの翼しか扱っていない、しかも両方とも同じ品という常識を逸した品揃え。メルキド都民には薬草は必要ないのか…!?
 宿屋も50Gとぶっ飛んだ値段で、ここをレベル上げの拠点と考えるにはコストパフォーマンスが悪過ぎます。現在はドムドーラで修行中ですが、薬草6個で60Gと宿屋3Gで63G。仮にメルキドに薬草が販売されていたら6個セット60Gと宿屋代50Gですからね。しかも、宿屋代だけなら薬草セットに勝る物の、呪文不使用縛りの中では薬草を消費せざる得ない状況というのも生まれるので絶対にラダトームのコストに勝れない。
「やはり、メルキドはまだまだ田舎だ」
 全くです。薬草がないなんて信じられません。


■ 最高レベルでも容赦無い世界 ■

 Lv25あたりでキラーリカントを(振れ幅はあるが比較的安定して)一撃で仕留められるようになったので、イトニーさんに一目置くアレフさんの心理に納得です。イトニーさんは呪文使用出来るので、攻撃火力があるので一撃で屠れるのでしょう。
 そんなアレフさんが竜王の城の宝箱を漁ろうと挑戦する日々が続くのですが、竜王の城には最強の門番が存在する。
 バリアである。
 ロトの鎧装備の一般プレイヤーなら歯牙にも掛けない存在ではあるが、装備制限呪文不使用という制限プレイヤーには強大な敵として立ちはだかる。半歩で7ダメージの強力なダメージで、例え最高レベルであろうと薬草全て使用しないと全回復できないのである。つまり、この縛りを続けるのであれば、竜王戦は一回も回復は許されないのである。
 挑戦していないとはいえ、無理ゲーな予感がムンムンです。
 とりあえず、最高レベルに達しないと地下2階の魔物にも勝てないのでレベル上げにドムドーラへ通うアレフさんでありました。

 ■ □ ■ □

 「次にお主がレベルが上がるのに、あと470の経験値が必要じゃ」

 はい?
 おい、末弟。この数字はどう見ても470だよな。その前に千とか付いてないよな。
 末弟『うん。470って書いてあるよ』
 おっかしいなぁ。
 Lv29に上がった直後に帰ってきてるから、最終レベルである30まであと470で上がっちゃうって事なんだよな…。
 末弟『王様がバカになっちゃったんじゃないの?』
 末弟。お前は何気に酷いな。
 いやいや、しかしそんな筈は……

 上がりました。最高レベル到達です。
 それでも、竜王の城最強の門番。ダメージ床ことバリアに根こそぎHPをもって行かれてしまうアレフさんである。そしてロトの剣を手に入れたらどうかは知らないが、鋼鉄の剣では一撃必殺が難しい魔物共…。竜王の城のセキュリティが高過ぎる………。
 まさかDQ1で世界樹の迷宮クラスの難易度を体感するはめになろうとは……。


■ 銀行は10万G以上の入金が可能な ■

「やべぇ!イトニー、お前そんじょそこらのドラゴンより強いじゃないか!」
「当たり前じゃないですか! 貴方が迎えに来るのが遅過ぎるんです! 私が…私がどんな思いで居た事か…!!!」
 吐く火炎の音よりも響き渡る腹の音である。ローラ姫の失敗したケーキやクッキーを処分していたのか、それとも我が儘に疲れ果ててたのかは分かりません。しかし、今ではドラゴンも一撃のアレフさんの攻撃に耐えながら、イトニーさんは堪忍袋の緒がぶち切れておられました。
「ちゃんと連れてくから、おちつけ!!」
「さっさと行っちゃって下さい!」

「あぁ、ここから救い出される日が来るだなんて…! 私はラダトームのローラと申します。勇者…っぷ、駄目だよ。アレフの事を勇者だなんて呼べそうに無いよ」
 てへっ。と笑うローラ姫である。そんな猫かぶりを目の当たりにして、アレフさんは顔が真っ青である。
「行くぞ」
「抱っこしてくれないの〜?」
「元気そうだからしない。毒の沼とかバリアは抱えてやるから」
 やはり闇の衣の遺産設定だとアレフさんとローラ姫はこうなってしまいます。

 □ ■ □ ■

「遠路遥々ようこそ!」
 ちっさい竜王さんは相変わらずの暢気さで出迎えてくれます。目の前に立っているアレフさんがボロボロなのには、全く見向きも致しません。
「お前の所の魔物共は本当に容赦ねぇな! 死んじまうだろうが!」
「宝箱漁りにきた奴に遠慮等する筈がなかろう」
「ぐぬぬ…」
 アレフさん。グゥの音も出ません。
「あ、そうであったアレフ。お主に言わねばならぬ事があった」
 そんな事を言いながら、玉座の近くに控えていた大魔道に何かを持って来させています。この大魔道、のほほんとした顔で瀕死状態でも容赦なくベギラマでオーバーキルしてくれるのでアレフさんの印象も随分と良く無くなっていました。
「なんだ、有名な世界を半分くれてやるって奴か?」
「違う」
 竜王さんは大魔道から受け取った物を、アレフさんに差し出そうとする。それは一抱えと言っても足りない位大きな袋であり、じゃらっと音が響き渡る。
「流石に私がラダトームの銀行に一億入金するわけにもいかんので、お主が自分で入れろと思ったのだが…。どうやらお主、一億Gは持って歩けんようだぞ?」
「な、なんだってーーーーーーー!!ぐふっ!!」
 そりゃ、死にたくもなりますな。


■ やっぱり、竜王さんは手加減してた ■

さて、竜王の城最強の門番及びセキュリティを如何にして回避するか。レベルは既に最高に達し、ロトの剣でも一撃必殺ならないモンスターがぶっちゃけ殆どである。いちいち応戦していると確実に途中で力つきます。しかしレベル30の状態で城の魔物から回り込まれる事は今の所なく、先制されずに逃げに徹すればノーダメージで竜王の所に到達出来る事となる。バリアを越えた後は、最後の毒の沼2歩以外ダメージを抑える事が可能と想定しています。
宝箱も漁って来て、竜王の城内部には2個の薬草がある事を確認。
リムルダールで全回復して薬草補充をすることで、事実上8つの薬草が使用可能である。しかし、鉄壁の門番であるバリアで6個をフル稼働して全回復する必要があるので、竜王戦に持ち込めるのは竜王の城で補充出来る2個だけである。
そして肝心の竜王戦。
最も重要なのが薬草の使いどころ……ではなく、運であったということ。

「アレフ…もういい加減にしたらどうだ?」
 竜王さんは怠そうに玉座に座りながら言いました。
 目の前で息を荒げているアレフさんはと言えば、今にも死にそうな感じです。
「私も良心の呵責というものを感じてしまうぞ。弱い者イジメみたいに思えてしまう」
「まだだ。まだ、諦めねぇぞ!」
 ロトの剣を構え再度突進するアレフさんの背を見ながら、ローラ姫はこう呟きました。
「すっごく勇者って感じだけど……大丈夫? イトニー?」
「あまり…大丈夫では………」
 ローラ姫の隣で、もはや疲れきっているイトニーさんです。イトニーさんもアレフさんが死にかけると回復させているので、いい加減魔力が尽きそうなのでありました。人間以上の魔力を持つだろう存在の魔力が枯渇する程、アレフさんと竜王さんは戦い続けていたのです。
 結果は一方的にアレフさんが負けるばかりでしたが。
「あーー、じゃあ私が竜の姿でお主が無傷の状態で戦闘を始めてみてはどうだ? いや、むしろそれで勝てなかったら諦めてくれ」

 そんな状態でもアレフさんは一度も勝てませんでした。

 参考程度に、アレフさん最高レベル時のHPは209。
一時間挑戦し続けたが(根気と時間軽減の為に中断セーブ利用)

  一 度  も追いつめられませんでした。

 敗因は無論の回復力不足なのですが、防御コマンドもないのが辛い。
 下手をすれば第一形態でぶっ転がされる事があり、第一形態もベギラマ等で確実にHPを削ってくれる。第二形態に突入出来るのはHP100〜130に削られてからである。最高火力の激しい炎が70前後ダメージ、次いで火炎の息が25前後、火の息が15、通常攻撃が振れ幅有りで45〜30。第二形態はローテーションだが、二回目の激しい炎がトドメになるかならないかの違いである。
 試しに第二形態突入時に回復呪文で全回復してというのも試したが、勝てなかったorz
 ちなみにアレフさんが竜王さんを仕留めるのに何撃必要か数えたら、7撃必要である。どう考えても攻撃チャンス7回生み出す事は不可能で、その前にHPが削りきられてしまうばかりである。会心の一撃は全く期待出来ない。

「じゃあ、ほら、最強装備で挑んでみたらどうかなぁ…」
 ローラ姫の言葉に竜王さんも渋々頷きます。
「それで納得するのならな…」
呪文縛りだけ継続して最強装備で挑んでみました。
ロトの剣、ロトの鎧、水鏡の盾、竜の鱗を装備して挑みます。
先ずロトの鎧による門番の無効化がなにより大きいです。これで竜王戦に薬草6個を持ち込む事が可能になりました。また激しい炎のダメージが60〜50に減少し、火炎の息は20から15、火の息も10前後と大幅な軽減。攻撃は30台。
それでも相変わらず回復力不足による敗因が覆らず、薬草を6つも使っている余裕もない。第一形態のダメージ蓄積の関係もありますが、薬草を使うタイミングもローテーションとはいえ、火炎の息or攻撃、攻撃or火の息という所があり運が絡みます。記憶していても敗北濃厚な対戦ですが、全く勝利の可能性がないわけではないという最終決戦に相応しいシビアなバランスです。
しかし第一形態でラリホーで眠らされず、会心の一撃が飛びHP180を残して第二形態に突入する事に成功! 第二形態のローテーションもかなり頭に入っており、最大火力の炎が飛んで来るタイミングと、火の息等で薬草の回復力が攻撃力を上回るタイミングで使用する事に成功。
そして…ついに……!

「うっしゃあああ!竜王、俺の勝ちだ!」
 どどんと大きな音を立て倒れる竜王さんにアレフさんは珍しく満面の笑みで言い放ったのでした。
 あれだけやり直しておきながらで、成り行きを見守っていた皆様は思う所がおありと思われますが竜王さんは満足そうに牙を覗かせて笑いました。
「全く、人間には何時も驚かされる」


■ 何処までも歩いたアレフガルドに鳴り止まない広野を行く ■

「やっぱり滅んでる様にしか見えんのだがなぁ…」
 そんな事を呟きながらアレフさんは廃墟になったドムドーラの瓦礫の上に腰掛けていました。砂漠の中でありながら毒の沼に侵されて、もはや草木も生えぬような色の地面が模様の様に広がっています。
 空に漂う陰気な雲の影が、有り難くも嫌な日陰になって降りて来るのです。砂塵が目に入って目を閉じたアレフさんの隣に、人の気配が向かってきました。殺気も闘気もなく、足音も消さない暢気な歩調は、ようやく目を開く事が出来たアレフさんの横で立ち止まったのでした。
「おや、こんな所で休憩されているんですか」
 アレフさんが見上げると、一人旅なのか重量のある荷物を持った旅人でした。旅人はアレフさんより少し年上の風貌でしたが、特に武術に秀でている様子も無く、戦いに不向きそうな温和な雰囲気を醸していました。
「もう少し南に行けば森と宿場町がありますよ」
「知ってる」
 アレフさんが素っ気無く答えても、旅人は不快な顔はしませんでした。
 旅人はアレフさんの横に座ると、荷物から大きな物を取り出そうとしているようでした。
「このドムドーラも昔は随分と賑わったものです」
 アレフさんはメルキドとラダトームを幾度となく往復している傭兵でした。だからこそ、この旅人よりもドムドーラの賑わいを熟知していると思っているのでした。煩い程の客引きと、酒より水の高い酒場。馬と馬車が犇めき合う一角、何気に充実している商店。メルキドとラダトームの中間にある大都市は、商業の中心地だった。
 無言で聞き流しているアレフさんに、旅人は話し続けます。
「目を閉じると、ほら、かつての賑わいが浮かび上がってきますよ」
 砂塵が目に入った不快感が未だ拭えないアレフさんは、そんな言葉を面倒そうに聞きながら目を擦りました。真っ暗な視界の中で彼は、美しい竪琴の音色を聞いた事でしょう。
 再び目を開けると、アレフさんの目の前には多くの人々が行き交っていました。竪琴の音色は人々の雑踏に、遥か彼方に押しやられます。彼が見慣れたドムドーラの町がそこにあったのでした。
 驚いて立ち上がり、直ぐに横を見遣りました。
「やっぱり、頭が茹だっちまったのかね」
 旅人の姿は、そこにはありません。