『DQ3から1に至る伝説の伝わり具合』について緩く考える

□ 公式における伝説の伝わり方について
 ゲームは制作順の都合と言うロマンの無さがあるので、公式小説版を基準に考えて行きます。
 高屋敷氏は1から3の繋がりをかなり綿密に組んでおり、それが公式として公認されたという前提で書きます。で、肝心の公式公認小説の設定です。
 勇者とロトの名前はセットで用いられ、人々に知られています。
 勇者ロトが倒した『大魔王』ですが、ゾーマの名前はミリとも出ません。ガライとかが度々出て来て昔の事を語ってくれるのですが、その時も『大魔王』とは言えゾーマの名は出ませんでした。
 さらに驚いたのが、アレフガルドの中央の城。
 元々は精霊ルビスを信仰する神殿を、ゾーマが乗っ取り、倒された後に再び精霊ルビスの神殿として再利用されています。そんな曰く付きの神殿が1では、大魔王ゾーマが昔使ってましたって記述がすっぱりとないのです。
 しかし一般人が知り得るロトの伝説の範疇では『大魔王が現れて世界を滅茶苦茶にしたけど、勇者ロトが倒してくれて平和になりました』程度の話であるようです。大魔王の名前や、大魔王の拠点としていた場所、勇者達が大魔王を倒す為の旅の内容は殆どありません

□ ロトの伝説の内容が必要最低限しか伝わらなかった事について
 勇者ロトが冒険の最中にお世話になっている者に、迷惑を掛けない為に伝えるべき内容を制限した。
 この説は雨雲の杖を受け取る事になる賢者が、勇者ロトの命の恩人であるからです。他にも王者の剣を鍛えた職人も対象になるでしょう。恩人達が安穏な生活を続けて行く為に、勇者ロトが敢えて語らずにいた事だったと思います。
 そのような経緯で、勇者ロトの旅の内容が殆ど後世に残らなかったのではないかと考察します。

 □ 大魔王の居城が完全に隠蔽された事について
 元々、精霊ルビスの神殿でした。その事実は変わらずとも、どうして大魔王が使用した記述は残らなかったのか、が主な焦点。
 それは人々の信仰の拠り所が穢されたとなる事実を隠蔽し、人々の心の安寧を計ったのではないかと推測されます。事実、竜王の城として人々に知れ渡った城は、2で廃墟と成り果てています。
 3から1にかけて『アレフガルドに再び危機が訪れる』という予言があります。その為に、人々の心を束ね、脅威に備える為に信仰が必要であった。その為に、大魔王が使った曰く付きであっても、精霊ルビスの信仰とその信仰の器となるべき大神殿が必要であったと考えます。
 後の世代に完全隠蔽してみせた、3のラダトーム国王の実力は半端ないようです。

 □ ゾーマの名前が後世に残らなかった事につい
 さて、ここは『勇者ロト』の存在も引き合いに出します。
 小説版での3勇者の名前はアレルさんですが、勇者アレルがゾーマを打倒した時にラルス国王より『勇者ロト』の称号を与えられます。勇者ロトは『アレフガルド創世記に、邪悪な暗黒の覇者からアレフガルドの大地を守った伝説の勇者の名(小説ドラゴンクエスト3 P214)』とあります。
 私はアレル、もしくはゲームのプレイヤー自身である勇者がロトの称号を受け取った事によって『3の物語とアレフガルド創世記の伝説が融合してしまった』と考えています。
 その為にゾーマという大魔王の名前の重要性は失われ、ただ単に『大魔王』として後世に残ったのではないかと思います。また、その関係で1の時代の人々は勇者ロトが3の主人公であるのか、それとも創世記の勇者であるか分からないのではないかと思います。