精霊ルビス

 俺はいつの間にか見知らぬ家に立っていた。重厚な大理石の床に黒曜石の窓枠、黒が基調の部屋だったが光の加減で鋼の様に灰色に輝いている。調度品も石材が多かったが、そんな事が気にならない程に上等な物ばかり。普通だったら目の色変えてみる筈なのに、俺は何故か感心を向ける事が出来なかった。
 誰か居た筈だ。俺は誰だか分からないが誰かを探して視界を巡らせる。すると、黒い空間の中に薔薇色で美しい炎のような女が立っている。
 手を伸ばせば触れられる距離にいきなり現れた彼女は、深紅のドレスを纏って様々な色の輝石を繋いだ首飾りを掛けていた。髪も瞳も真っ赤で、唇は血の色よりも触れたら火傷しそうな熱の色だ。頬の僅かの赤みでさえ、その血色のいい肌の下に燃える赤を潜ませていると思った。愛らしい顔立ちだったが威厳に満ちていた。まるで女王のようだ。
「貴方は何時、ロトに名前を返してくれるの?」
 驚いて見つめた女の顔は険しかった。怒る彼女の周囲が陽炎の様に揺らめき、俺に肌はちりちりと痛み出した。
「貴方は自分の名前を捨てているのでしょう? 要らないのなら、ロトに返して」
 ぎくりと、俺は身を堅くした。脳裏に本名がちらつく。
 どうして知っているんだ、この女。俺はもう随分と昔から本名を告げずに生きている。本名は二度と名乗るつもりは無かったが、俺が今名前と使っている『アレフ』は偽名という訳でもなかった。自分の本名を知っている人間はもう故郷の人間だけだが、彼女のような炎の様に赤い見れば忘れる事の無い女を俺は知らない。きっと、故郷の連中も俺が生きているなんて夢にも思っていないだろう。俺の本名なんてもう、ごくごく一部の例外を除けば誰も知らない。
 女は詰め寄って来ようとする。熱が火傷するような害意を持っていて、思わず後ずさる。
 すると、俺の背後に居たのだろう誰かに当たる。そいつは背後から抱きしめる様に俺に腕を掛けた。無骨な装飾品がよく似合う、筋肉質で巨大な掌が俺の前に現れる。その男の腕が俺の肩に掛かると、女は忌々し気に立ち止まり憎しみの籠った声で言った。
「その子は、誰よりも貴方に似ているわね」
 女が俺の背後にいる奴を見上げていた。そんな俺も釣られて見上げると、そこは真っ暗で何も見えなかった。


 がくっと体が傾くのを感じて、慌てて竜王の鱗にしがみつく。俺に焦りを感じたのか竜王が笑った。
「退屈だからと言って寝こけていると落ちるぞ」
「お…おう……」
 俺が再び竜王の鱗に手を掛ける。命綱は竜王の足に掛けてあるので、背に乗っている間は鱗に掴まる必要がある。とはいえ、流石竜族の王様だけあって、鱗一枚だけでもお鍋の蓋より薄くても大きく頑丈だ。古来から竜の鱗は高級素材だが、この鱗は別格だ。一枚だけで美術品並みの価値があって、逆に竜の鱗なのかと疑われるくらいだろう。
 竜王の首辺りにくっ付いている俺だが、その視界は現実離れしている。
 竜王の巨体の浮力になっている翼は後方なので、前方以外は全て風景だ。地平線ですら下方にあり、眼下の海も大陸も大きな空の球体の下に溜まるかの様に小さい。雲も遥か下で空に近過ぎるからと竜王は言うが、空の色は海の様に濃くて星が瞬いている。山以上に高度のある所でありながら息苦しく無いし、飛ぶ速度も風の抵抗も感じないのは竜王の魔力制御の賜物らしい。空の旅は快適だったが快適過ぎて現実離れしている。
「アレフが寝こけるなんて初めての事だな」
 竜王にそう言われれば、自分でも不思議に思う。
 命綱があるとはいえ、こんな危険極まり無い状態で寝るなんて自分でもあり得ないと思う。例え竜王を信頼しきっているとしても、きっと無い。
 じっとりと掌が汗ばんでいる。まるで目の前で自分の名を呼ばれたようだった。『アレフ』が本当の名前ではないなんて思う人間など居ないから、本名に触れる人間など当然居ないし夢ですら思い出したりなんてしない。この不可思議な状況を思えば、きっと見せられたと思うのが正しいかもしれない。誰に? そりゃ、あの赤い髪の女にだ。
 俺が…いや、俺の先祖に当たる人物がロトから名前を奪った。それを返せという内容だった。
 俺はかつて一つ屋根の下で共に暮らした家族に対して拒否的な考えを持っていて、俺が幼い頃には袂を分ち二度と会っていない。だが、一つだけはっきりしている事がある。俺が表に出さないその名は、代々長子に与えられて伝えられていてその名前を持つ者はこの世界に俺だけだと言う事。そんな歴史を感じる家柄かと問われると、そんな事は無かった筈だ。あの赤い髪の女は、俺が唯一の名の相続者である事を知った上で名前を返却しろと言ったのだ。俺以上に俺の一族の事を知ってるんだろう、気味が悪い。
 俺は僅かに体を震わせた。その気配に竜王は少し心配そうに金色の瞳で俺を見遣る。少し俺を気に掛けた気配を滲ませたが、結局言いかけた言葉を飲んで再び飛ぶ事に専念したらしい。俺の顔色は良く無いのだろうが、それで休憩を取ろうと提案しても俺が承諾しない事を分かっているんだろう。
「アレフ、精霊ルビスとはどんな存在だ?」
 代わりに、竜王はそんな事を訊ねた。
 ムーンブルクでリウレムという小僧から、精霊ルビスを奉った祠を聞き出したからだと思った。俺達が向かっているのはムーンブルクとデルコンダルの間に広がる大海で、竜王が高みを飛んでも大陸が見えない程の広大さを誇っている。その真ん中にあある小さい小島がルビスの降り立つ祠であるそうだ。これから会うだろう存在を知りたがっているのかもしれん。
「ミトラ教から精霊信仰に至るまで、様々な宗教では2番目かそれ以上に位置する信仰の対象だな。人間に対し慈愛と守護を担う神の代表格で、ある意味ミトラより人気がある女神だ」
 精霊ルビスは精霊から神の一人に格上げされた希少な存在である。神であっても、精霊と呼ばれるのは彼女が精霊達の長であるという意味も含まっているのだろう。彼女はこの世界が危機に瀕する毎に人間に手を差し伸べ、様々な助力を与えたという。その為に大魔王ゾーマは彼女を捕らえ、人間に力を与えない様に石像にして封印したという伝説がマイラの西の辺鄙な岬に残されている。人間にしてみれば善神の代表で、彼女に祈る事を疑問に思う奴は居ないだろう。
 竜王は俺の言葉を聞いて思案する様に言葉を紡いだ。
「人間達の社会では万能の神ミトラは善神とはされていない。ミトラは世界を生み出したが、そんな世界には裏切りがあり憎しみがあり絶望があるからだ。しかし、ルビスは違う。ルビスは完璧なまでの善神で、僅かに疑心と畏怖を抱かせるミトラとは違い盲目的な信仰の対象になっている」
 言われて見ると確かにそれは変に感じる。道中の安全を祈るのも、子供の幸せを願うのも対象は精霊ルビスだ。しかも、それが叶わないとミトラを恨む。
「私は神を信じてはいない。だからミトラが願い祈っても、救いの手を差し伸べない事に怒りや憎しみを抱く事は無い。そして、ルビスが求めた救いに応じて手を差し伸べて救ってしまう事を疑わしく思う。私達は魔物だ。ある意味、人間も魔物もこの世界に存在しているなら同列と思うようなミトラが好ましく思うほどなのだ」
 竜王の言葉は最もだった。神を信じていないと言っておきながら、この世界の何処かに神が居るのだろうという認識は俺にもある。それは、ミトラが存在するだけの存在だからだ。天にも昇るような幸福を得ても、どんな凶悪な事件が起きようと悲惨な出来事が身に降り掛かっても、ミトラに人は何の感情を抱かない。幸いも不幸もミトラの恩寵と称するだけあって、ミトラは善悪もない透明な神様だからだ。
 しかし、ルビスは違う。彼女ははっきりと人格や容姿が明らかにされている。そして、多くの人々を救って来た実績があり、救われなかった為に憎悪を激しく向けられる神である。俺は救いを求めるのも願う事も簡単だが、願い求めるうちに自分で解決する力を失うのを恐ろしく感じた。
 同じ神なのにこの差は何なんだろう。
 俺は言い様のない不安を抱く。この不安は竜王が今、抱いている物と同じなのだろうとなんとなく思った。しかし、俺は同じ感情を抱いていると思ったが、ふと違和感を感じて訊いた。
「竜王、怒ってるだろ?」
「……怒っているように見えるか?」
 竜王が金色の目を俺にちらりと向けた。ムーンブルクを飛び立った頃から竜王の機嫌が悪かった理由を、今更に理解出来た。
 俺は鋼鉄の剣の鞘で竜王の頭側をこんこん叩いた。
「くそ真面目もいい加減にしろ。どんなに絶望的だろうが、怒ったって叫んだって変わらない時がある。怒る時間も叫ぶ時間も諦める時間も、結局は無駄な時間だ」
 俺は小さく笑った。
「ただ、只管に動くんだ。自分の願う方角に向かってな」
 そうして、俺は生き延びて来た。俺の中で決して揺るがない信仰だった。

 □ ■ □ ■

 精霊ルビスの祠。そこは竜王が訊いた通り、大海のど真ん中にあった。しかし、それは小さい浅瀬かなにかと錯覚する程小さい島で、家一軒立てられるかという小さい面積で大岩と思われても仕方が無いだろう。俺はムーンブルクの王子が知っているんだから、精霊ルビス信者の巡礼場となっているかと思ったが人の手など何一つ感じない。王国だけの機密事項かと思ったが、王国の限られた人間が祭事を行う為の様々な整備もされた気配がない。
 もしかして、あの小僧しか知らなかったんじゃないか。ミトラの両拇指の事は俺達も知っている。ミトラの一部である物の末裔も、もしかしたらルビスの正体を知っていたのではないか。もしかしたら、訊く相手を間違えたかもしれない。俺は一瞬そんな事を考える。
 背後で竜の姿から小さい魔物の姿に変化した竜王は俺を見上げた。俺は笑って足下にある小さい亀裂を指差した。
「ルビスさんが居ると良いな」
「そうだな」
 竜王もそう言ってその亀裂を覗き込んだ。中は大人の人間が一人入れる隙間がずっと続いている。洞窟のような縦穴を延々と下るうち、大きな空間が開けた。そこは壁の代わりに海水が滝の様に流れ落ちていて、延々と、それこそ海底に接する程に下に続いていた。縦穴はいつの間にか螺旋階段のようになり、横手にはしびれクラゲが群れをなして通過したり、ディゴングが泳いでいたりするのを眺められた。ちょっと気になってスライムで実験してみたが、水圧にぺったり潰れるのを見て間違いなく海だったようだ。
 階段を下りきると、そこは噎せ返りそうな水飛沫を全く感じさせない乾燥した場所だった。美しいモザイクのタイルの上に、4体の石像が中央の空間に向かって立っている。威厳溢れる老人、絢爛豪華な夫人、女と見紛うような麗人の男性、そして首がない武人のような逞しい男。
 ここよりも先に進む事は出来ないって事は終点だ。俺達はここに来て、ルビスに会う方法を全く知らない事に気が付いた。立ち尽くして、ムーンブルクに引き返そうか…そんな事を言い出す機会を窺っている時変化が起きた。
 滝の雫の様に光が中央に降り注ぎ始めた。光は女の形に降り積もり、瞬く間に格式高いドレスの裾とレースになり、緩やかなウェーブの長髪になる。その女を形作る光はどれもが目に痛い程に眩しい。俺は翳した手の裏側で必死に目を細めて見極めようと思ったが、眩しさに叶わなかった。
『ようこそ』
 ぎくりと俺は体を強張らせた。
 俺に名を返せと詰め寄ったあの女の声だ。だとしたら、精霊ルビスとはあの赤い女なのだ。どうしてルビスが俺の事なんて知ってるんだ…。そんな事を考えている暇も無く、竜王がちっさいわりに力のある手で俺の背中を押す。まぁ、俺の個人的な疑問なんかよりアレフガルドの事が優先ですよね。そうですね。
 俺は仕方なく、ルビスに向き直って用件を切り出した。
「俺はアレフガルドから来たアレフという者です。アレフガルドの生き物が皆死んでまいそうなんで、ルビス様の力でなんとかしてくれませんか?」
『私の力ではどうする事も出来ません』
 俺の頼みをルビスは上品にはね除けた。……どうやら俺達の不安はど真ん中に命中したようだ。
『闇の衣を剥ぎ取る事が出来るのは光の玉のみ…。私の力ではどうにもなりません』
「じゃあさ光の玉を作って下さいよ。貴方が神なら楽勝じゃないですか」
 竜王はここに来る道中、色んな事を語ってくれた。光の玉は寿命で効力が無くなって消滅したのではなく、誰かが作った偽物であった可能性がある。『虹の橋』と称された数々の魔法技術が生み出されたロトの時代の直後なら、光の玉を擬似的にでも作る事が出来ただろう。誰が作ったのかではなく、作った誰かは本物の光の玉とその光の玉が闇の衣に及ぼす力を知っていた事。本物を知る存在からヒントを得れば、もしかしたら光の玉が作れるかもしれない。神と呼ばれる存在なら、その実力で作る事も簡単だ…そんな事を言っていた。
 回りくどい。竜王も喋ってくれないし、俺もこんな訊いた事しか答えてくれない女と話すのはひどく疲れる。俺の口調も疲れから丁寧じゃあなくなって来た。
『光の玉は龍神の血筋を引く者の命が生み出す事の出来る神秘の秘宝です』
 あーー…つまりアンタじゃ話にならんという事か。役に立たないなぁ…。予想が出来ていただけあってがっかりなんてないが、アレフガルドを救う気が無いのか? こちとら一刻一刻を争うような事態なのに…。
「龍神って奴に会わせろよ。お前はアレフガルドの魔物をどう思ってるかは知らねぇが、少なくともルビス…お前が守護するべき人間はピンチなんだぞ?」
「……止めろアレフ」
 口調に怒りを滲ませ剣の柄に伸びかけた俺の手を、竜王のちっさい手が引いた。俺が振り返ると、竜王は首を小さく振った。その瞳には全てを理解したような光が浮かんでいた。
「結局、神はアレフガルドを見捨てたんだ。いや、ルビスを含め『神』と人間が呼ぶ者は、本当は人間の守護者ではないのだ…」
 俺はルビスを仰ぎ見た。そこには相変わらず微笑を張り付かせた女が光を纏って立っている。
 否定せず……ただ微笑んでいる。
 魔物1人の言葉に、何故ルビスは黙っている?
 竜王の言葉が正しいのか…?
 正しかったらローラはどうなる?
 俺は戻る事もできず、アレフガルドが死んで行くのを、ただ外界から見ていなくてはならないのか?
 何もできずに……。
 俺はどうして良いかも分からず、竜王の手を振払って竜王に掴み掛かった。
「じゃあどうするんだ!?あきらめるつもりか竜王!?」
 蒼白の俺の顔が映る黄金色の瞳が和らいだ。
「取り乱して折角の格言が台無しだな。アレフ。頼んでダメなら力づくだ。それが、私達に出来る最大の前進…だな」
 竜王の言葉に体から力が抜けた。気が抜けた訳じゃなく、安心感にほっとしたんだ。ルビスの何を考えているのか全く分からない微笑みに混乱した頭が冷やされて行く。
 お前らしい言葉にこんなにも勇気づけられるとは思わなかった。
 俺達は互いに武器に手をかけた。そこで上から柔らかいルビスの声が降って来る。
『『光の玉』を生み出す事の出来る、龍神の血筋を引く子孫がこの世界に居ります』
「何だ、まだ手段があるのか。誰だよさっさと吐け」
 自分のペースも取り戻した事だし、俺はぶっきらぼうにルビスに言った。ルビスはゆっくりと俺を指差す。
 ………ちょっと待て。俺が龍神の子孫なのか? 金にがめついただの傭兵だぞ。いや、よくよく考えれば俺以外にも、竜がいるじゃないか。
 俺は斜め後ろに立っていた竜王を見た。竜王は呆気にとられた様子でルビスを凝視していた。
「………私?」
 声が海水の落ちる音にかき消された。
 俺だって信じられない。竜王が何度も自分の事を魔物と言っていたから、竜王が魔物だとすっかり信じていた。神と呼ばれるはずの龍神の子孫が、なんで地上にいて魔物達と一緒に暮らしている? まさか攫われた子供を…親である神は助けに、それどころか迎えに来なかったのか? そりゃ神どころか親として失格だぜ。
 だが、一番信じられないのは、竜王のはずだ。
「そんなでたらめ、信じられるか!」
『ゾーマは闇の衣が我々が仕組んだ罠であると気付き、狭くなる異界の門から卵から孵る前の貴方を攫ったのです。我々が差し向けた勇者を倒したあと、アレフガルドに閉じ込められないようにと…』
 俺は耳を疑った。我々が勇者を差し向けた? 我々が仕組んだ罠? 『我々』とは神の事じゃないのか?
 じゃあ、闇の衣は神がゾーマをアレフガルドごと閉じ込める為の罠だったのか!? それじゃあ何の為の勇者だったんだ? 何の為のアレフガルドだったんだ?
「強大な力を持った魔物に、ただの人間をぶつけるのか? 導くとほざいて守護者と豪語して、結局何もしないのか!? ゾーマを倒せなかった保険まで掛けやがって!!」
 俺はゾーマと戦う為に、神に差し向けられた者が残した剣を構えた。アレフガルドの住人も、ムーンブルクを始めこの外界の連中もみんな…みんな神様が大魔王を封印して良い事をしたと思っている。人間を信用しなかったのは『ロト』は神が人間の守護者でない事に気が付いた。だからロトの証と呼ばれたそれを捨てたんだ。神から与えられた名誉と一緒に…。
 その切れ味に切れない物は無いだろう、特別な剣だ。扱うのは俺と同じ、全く特別ではない人間だ。
 生き残る事が出来たが、その後はどうした。奴らはどんな褒美を貰うことが出来た? どんな望みを叶える事ができた? 故郷にも帰れず、会いたい人にも会えず、見知らぬ地に骨を埋めたんじゃないか。神はこき使った人間のその後なんて知らない。神にとって人間は神の尊厳を保つ為の道具なんだ。魔王の爪痕を、あの毒の沼地を、そして漆黒の明けぬ空を想う。神が守護者であったなら…こんな事になる訳が無い。
 どんな奴だか知らないが、勇者ロト。お前の代わりに俺が切り刻んでやる。割りの合わない危険な仕事を仇といっていい方法で裏切った、お前の最低の依頼主をな!
『竜王を殺せばその命が光の玉となるでしょう』
 平然と言い放つルビスを、俺は憎いと思った。