ルシフェルが囁いたその果実の味は - 後編 -

 俺達は神獣カシャルを制し、天水の塔の騎士を退け守護者を打倒した。水の領界の竜族と炎の領界の竜族の争いは、俺達の完全勝利という形で幕を閉じた。
 勝利者となった俺達を、カシャルの巫女は神殿に招く。
 住民達は俺達と青の騎士団との抗争は説明されておらず、あの争いで生じた轟音や揺れは日々量を増やしている魔瘴の影響と認識されているらしい。イサークとラチックの後に続く俺達を見る住人達の反応は旅人を見る物珍しさで、実際に敵対した騎士団もすっかり敵意が消えて歓迎すらされている。
 穏やかな海底の生活が変わらずあることは、俺としちゃあ嬉しかった。
 カシャルを信奉する青の教団の総本山の最奥、祈りの間へ到着する。正面に立ったフィナは優雅に会釈をし、周囲に控えるディカスを筆頭とした騎士団の面々も敬意を表する。
 俺とエステラは最上位へ向ける礼を捧げ、膝を折り深く頭を下げる。背後に立つラチックとイサークも会釈をした。
「カシャルの巫女フィナ殿。お招きいただき感謝する」
 唯一動かなかったのは、フィナの傍に立っているヒューザというイサークと同郷の男だ。
 この水の領界に満ちる海と良く似た匂いに、多くの魔物の血を纏わりつかせていた。背に担いだ長剣を振るに相応しい、引き締まった筋肉の収縮はまるで歌っているかのようだ。随分と積極性のない沈んだ声に舌打ちを混ぜやがって、聞いているだけだと存分に不快を煽ってくる。鼓動は雰囲気と違って穏やかだから、ヒューザは『根は良い奴』という性格なのだろう。
 アストルティアからアンテロに誘拐された神の器の一人だ。本人が言うには、気が付いたら水の領界の海で溺れかけていたらしい。あの忠誠心が高いドマニとロマニが、アンテロから託された器をうっかり手放しちまうか? 胡散臭くはあったが、嘘は言ってねぇ。そう、俺とイサークは結論を出した。
 そんなヒューザは、ひらりひらりと頭の周りを泳ぐ小魚の鬱陶しさに耐えていた。払い除けようとする幼馴染に向かって、イサークが諌める。
「青と白の縞模様が可愛い子じゃないか。苛めちゃ可哀想だろー?」
 うるせぇ。これでもかと不快と煩わしさを織り込んだ声が呟くと、小魚はフィナに向かって泳いでいく。手を差し伸べるように小魚を胸元に招くと、小魚から淡い魔力が広がってフィナの魔力に溶けていく。
 それは視覚的に神々しかったのか、居合わせた面々から感嘆の声が上がる。
「…私の名は神獣カシャル」
 威厳溢れる女の声は、フィナの口からゆっくりと紡がれた。
「水の神マリーヌの眷族にして、水の領界、そして竜族の行く末を見守る者」
 周囲が驚きの声を上げていたが、俺としてはカシャルとフィナの魔力が同じだったので腑に落ちた感じだった。あれほどカシャルを意のままに操ることは、同一の存在でなければ難しいだろう。
 胸元から神殿の外へ泳いでいく小魚を、フィナは見送るように顔を向けていた。
「リトルマリンはマリーヌ様が生み出した海の化身。大海のように広大で、深海のように底知れぬ器を持つ者の前にしか現れることはありません」
 感慨深そうに呟くフィナに、ディカスがおずおずと言葉を掛ける。
「フィナ様。お声が…」
「リトルマリンが遣わされ、私の声が戻りました。皆様に真実を伝えよとの、マリーヌ神のご意思なのでしょう。お聞きなさい。ナドラガンドの真実を…」
 空の民、竜族。遥か彼方より世界を見守る聖なる者達。アストルティアの神話として俺達にも伝わる一節を、フィナの美しい声が歌い上げた。イサークが『なんて綺麗な音なんだろう』と陶酔した声で呟く。
「竜族は神話の時代、アストルティアの上空に浮かぶ浮遊大陸・ナドラガンドにて、竜族の種族神ナドラガと共に大地に暮らす弟妹神の子供達を見守っていました。その強大な力は多くの災いを退け、知識は幸福となって降り注ぐ。弟妹神の民は竜族に敬意を払い、空の民は地上の全てを慈しみました」
 不思議な心地だった。
 今を生きるナドラガンドの竜族は弟妹神の民を知らない。当然、アストルティアに行くまで、俺も伝承に聞く限りだった。実際に出会ったら、俺はどう感じるのだろうと思ったものだ。竜族よりも弱い弟妹神の民を億劫に感じるのだろうか? 竜化する俺を脅威に感じて、刃を向けるのではないか? 色々と思い巡らせた。
 実際に出会い受け入れられた喜びが、仲間の頼もしさに誇らしさが、尽きぬ泉のように湧いていた。そんな感情が懐かしさに結びつく。それを不思議に感じていたが、フィナの言葉がふんわりとした疑問の答えを与えてくれた。
 竜族は弟妹神の民を慈しんでいた。俺の感情は本来竜族が持っていたものなんだ。
 弟妹神の民に悪虐の限りを尽くし笑うアンテロの姿は、本来の竜族とは違うのだ。それは想像以上の安堵感となって、俺の心に満ちた。
「しかし、神々の世に突如終焉が訪れたのです」
 フィナの柔らかい声が、張り詰める。
「ナドラガが邪神に堕ち、弟妹神に戦を仕掛けたのです」
 騎士団に動揺が広がった。常闇の塔で闇の領界の原因が、古の時代の竜族が撒いた毒であると知る俺とエステラは耐えるように聞いていた。やはり竜族は悪であり、弟妹神と争ったのだ。確定した事実に歯を食いしばり、拳を握るしかできない。
「血で血を洗う争いは数千年に及び、竜族も弟妹神の民も星の数をも超える命が散っていきました。魂を導く天使は全て地上に降りて夜空を彩る星は消え去り、終わりなき戦いは民だけでなく神々をも疲弊させました。弟妹神達は終わりなき戦いに終止符を打つ為、ナドラガンド諸共、邪神となったナドラガ神を封じることを決めたのです」
 違うとどこかで否定出来ると探っていた可能性が、フィナの声で潰えていく。もはや言葉も出ない騎士達を見ているのか、フィナの声にも苦悶が滲んでいた。
「弟妹神は兄神の身を引き裂き、五つに割ったナドラガンドに封じました。ナドラガに従い先兵となって多くの民を殺めてきた竜族と共に、ナドラガンドとナドラガはアストルティアから切り離されたのです」
 今を生きる竜族には何の関係もない贖罪の始まり。数千年。星の数をも超える死。奪った幸せ。与えた苦痛。空を見上げ手を振った子供達が、竜の影に怯え逃げその小さい背中に爪を突き立てる。慕い信じた存在に裏切られる絶望に泣き叫ぶ弟妹神の民の声が、魂を引き裂くようだった。種族に刻まれた誇りを自ら折って狂わざる得なかった先祖達の犯した罪の重さが、俺の膝を砕く。重いと覚悟していた罪は、想像以上の重量で俺を押し潰した。
「ダズダズ。大丈夫?」
 イサークが寄り添う温もりが脇腹を温める。今にも崩れ落ちそうな体を、ラチックが支えてくれた。心配しているのか顔を覗き込む二人に、俺は思わず縋り付く。そうしていないと、どこまでも落ちていってしまいそうだった。
「ナドラガ様が…邪神? そんなこと、信じられません」
 そう真実に打ち拉がれる竜族達の中からいち早く立ち直ったのは、エステラだった。今にも消えてしまいそうな掠れた声で、フィナに問う。
「貴方の語ることが真実だったとして、なぜ、ナドラガ様は邪神に堕ちてしまわれたのですか?」
 エステラの問いに、確かに、と意識がしっかりする。
 神話の時代の戦いも、現在の竜族の贖罪の日々も、全てナドラガ神が邪神になったことが発端だ。女神ルティアナの長子は特別な力を授かった、兄弟神でも一際強い力を持った神だった。なんの前触れもなく、突然邪神に堕ちるとは考えられなかった。
 しかし、フィナはエステラの問いに首を振る。
「ナドラガが邪神に堕ちたのは、我々にとって突然のことでありました。弟妹神達は幾度もナドラガの心変わりを検証しましたが、真実に至ることはできませんでした」
 全てはナドラガ神の腹の中ってことか…。
「分断された領界の解放は、ナドラガの復活と同じ意味を持っています。邪神が蘇れば神代の悲劇が繰り返される。このまま贖罪の日々を重ねていれば、竜の民は永年の罰から解放され救いが訪れるはずはずでしたのに…」
 最後の言葉はフィナが顔を覆ったことで、声が濁って消えていく。そして嗚咽が漏れるのを、竜族達は立ち尽くして聴くしかできなかった。
 この場ではフィナ以外で唯一の女性のエステラが、泣き咽せるフィナを労ろうと一歩踏み出した時だった。扉が開け放たれ、騒々しい足音が場の空気を容赦なく荒らす。
「エステラよ。耳を貸す必要はない」
 ナダイアの声に俺は思わず顔を上げた。
 トビアスが円環の遺跡の鍵を手に入れたのだから、もうここは用済みの筈だ。ナダイアは元々高圧的な態度の男だったが、それにズッシードを二回掛けした圧迫感でカシャルの神殿の最奥に踏み込んできた。大股でフィナに迫るナダイアの行手を遮るように、俺は立つ。
「退け、ダズニフ。その女は神の名を騙り、竜族を惑わす邪悪なる意志の手先ぞ」
 動かぬ俺を見て、ナダイアは嘲笑を混ぜた溜息を吐く。両手杖を持っていない手を軽く持ち上げ、ナドラガ神の教えを説いて聞かせるように語りかけてくる。その声は威厳と自信を伴って、聴く者に真実であるかのように届く。
「その女が守りたいのは水の領界の竜族のみ。その堕落した意志は、水の領界の同胞に侵食した。偽りの理想郷を築き、竜の民の魂を堕落に繋ぎ止めた罪は万死に値する」
 ナダイアの言葉が海の中に溶けていくと、俺はゆっくりと頷いた。
「その主張には概ね同意しよう」
 ダズダズ! 潜められたイサークの不安を和らげるように、口元を軽く上げた。軽く肘を曲げ、胸の前に見えぬ何かを抱くように手を広げる。唇を舌で軽く濡らして、親父に似た心地よく聞く者に響く声を紡ぐ。
「だが、水の領界の民が安寧の日々に浴せたこと、今我々が息ができる状況でさえ、神獣カシャルの恩恵であることを忘れてはならない。過程を評価せず、結果論を振りかざす粗暴な主張は、ナドラガ神が弟妹神に説いた公平さに反する」
 俺の反論に息をぐっと詰まらせたナダイアに、俺は一歩踏み込んだ。
「ナダイア。俺に神殿から叩き出されるか、ナドラガ神に仕える神官として無礼を働いたことを認め引き下がるか選ばせてやろう」
 朗々と響き渡った俺の言葉に、沈黙する現神官長。ナドラガ教団が抱える多くの神官達の模範になるべき神官長が、俺に神殿から叩き出されるだなんて噂でもあってはならない。更にナドラガ神が弟妹神に説いた様々な逸話を、説法として神官達は暗記する。事実を織り交ぜた俺の発言を、侍らせた側近の目の前で否定することは出来ないだろう。
 果たして、それでもフィナを殺すか? 俺は慎重にナダイアの出方を観察する。
 ナダイアの握り込んだ拳から、みしりと音がした。海底の底までやってきた側近達が思わず一歩後退り怯えた感情を向ける先で、答えが絞り出される。
「やはり、貴様は我らを導く存在ではなかった」
「お前達が俺を勝手に担ぎ上げただけだ」
 両手杖の石突が床を突く。耳を貫いた音と足の裏から突き上げる衝撃が、ナダイアの怒りを物語る。
「今この瞬間より、貴様をナドラガ教団の敵と見なす」
 歯軋りする隙間から漏れた言葉は、完全に負け惜しみだった。俺はにやりと笑ってやる。
「利用価値のある道具から、敵に格上げしてもらって嬉しい限りだ」
 一つ大きく脈打った心臓と共に、体の内から爆発するような怒りが迸る。しかしナダイアはどうにか竜族としての形を留め、神官長という立場を守り抜いた。外套を翻し、怒気をこれでもかと込めた闘争に敗れ尻尾を巻いた竜の遠吠えが響き渡った。
「征くぞ、ナドラガ神の使徒達よ! 吹き荒ぶ嵐を越え、竜族に救いを齎すのだ!」
 闇の領界と繋がる遺跡と、嵐の領界を繋ぐ遺跡はそれぞれ海上の上に存在する。このルシュカを滅ぼすつもりでないなら、二度と来ることもないだろう。
 俺の傍をすり抜け、エステラがナダイアの後を追う。
「行くか、エステラ」
 俺の言葉に立ち止まったエステラは、逡巡する声を口の中で転がす。
 引き止めるつもりは更々なかった。なぜ、声を掛けてしまったのか、俺ですら戸惑う。
 エステラにとって、オルストフのじいさんの言葉は絶対だ。しかし、このまま俺に同行しては、ナドラガ教団から破門を言い渡される可能性が高い。エステラが俺の為に、父のように慕うじいさんとの繋がりを失う必要はないのだ。
「私は故郷の悲劇を二度と繰り返さない。その一心で神官を志しました。しかし、救えたものなど、ほんの少し。今も領界の厄災に苦しむ民を前にして、何も出来ぬ無力を噛み締めるばかりです」
 手を握り込んだ音が、殊更大きく響いた。
 エステラは努力家だった。今まで優秀な神官を育て上げてきた親父が死んだ後、教団の教育体制は手探りの状態にまで後退した。そんな中でエステラは『故郷で死んだ両親のような、他者を救う神官になりたい』そう意気込んで、教団の幹部達に認められる実力を手にした。生半可な努力では成し得なかったろう。
「ナドラガ様を復活させ、竜族をお救いいただく。私達には、もうその道しか残されていません」
 あぁ、この娘もそうなんだ。エステラの絶望を想う。地獄を生き延びてきたとしても、領界を渡り歩く実力があったとしても、種族神のご加護がなくては生きていけない。
 貴方はどうするのですか? そう聞き返され、俺は髪に手を突っ込んで掻いた。
「もう、二度と教団の敷居は跨げねぇよ」
 俺達が生まれ、育った箱庭。未練は無いと言えば、嘘になる。
「一つ、頼まれて欲しい。トビアスとルビーが心配なんだ」
 解放者は領界を解放しナドラガ神を復活させる教団の旗印。実際に青の騎士団の心を動かし、嵐の領界への道を開く円盤を手にした実績がある。トビアスは俺の後釜に据えられる最有力候補だ。
 まだぐったりするルビーを抱え、炎の領界に引き返していった背中を追うことは出来ない。あの二人を守って欲しい。神に祈りたい気分だったが、俺は目の前のエステラに深々と頭を下げた。
「頼む、エステラ。信頼できる奴が、お前しかいない」
 考え込むように黙っていたエステラは『わかりました』と言ってくれた。そして未練を断つように祈りの間から飛び出していく背中を見送った。
 ねぇ、一つ聞きたいんだけど。そう水を揺らすでもない不思議な声色が響いた。イサークの被っている大振りの帽子が、重たい水に凹みながら身震いするように動いでいる。
『ナドラガの弟妹神達は、この天罰を受ける竜族にどうあって欲しかったんだい?』
 その疑問、俺も聞きてぇな。黙っていると、ブレラの質問は続いていく。
『ナドラガを復活させないようにするなら、領界を繋ぐ円環の遺跡は必要ないじゃないか。鍵となる円盤を守る守護者も、竜族に試練を課す聖塔の試練もあってはならない。大人しく罰を受けさせたかったのなら、可能性をなぜ残したんだい?』
 そうなのだ。
 ナドラガ神が自ら復活する為に円環の遺跡が作られたとしたら、試練は必要ない。ナドラガ神が復活する領界の解放の可能性を、弟妹神が生み出したということになる。
 さらに領界を見守る眷属ですら、考えが違う。
 ドワーフの種族神ワギの眷属だろうパティチャカは、竜達が自ら道を切り開くことを歓迎していた。しかし、目の前のカシャルは赦しの日が来るまで耐えろと強いる。この正反対な考えの違いは、いったい何なんだ?
 神獣カシャルであるフィナは、伸びやかな声で答えを歌う。
「邪神に堕ちたナドラガの封印の継続は全会一致で決定しましたが、共に封印した竜族の処遇は意見が分かれました。赦しの日が訪れるまで贖わせるべきという神々と、新たに生まれる生命には罪はないと断罪に消極的な神々で二分されたのです」
 なるほど、女神ルティアナの子供達はそれぞれに個性的だ。多くの場面で意見が食い違う度に諍いが起こるので、長兄であるナドラガ神が仲裁する場を設けたと伝承にある。長兄の行いに怒りを露わにする神も、大罪を犯した竜族に同情的な意見を持つ神もいただろう。
 纏まらなかった考えが、それぞれの領界の厄災の程度に反映されるとは皮肉なものだ。
「最終的に神々が折り合いをつけて生み出されたのが、円環の遺跡と聖塔の試練なのです」
 試練を超えて領界を繋ぐなら、文句は言わねぇってか。
 だが、円環の遺跡と聖塔の試練は、竜族達の償いとは関係ない。竜族達を哀れに思うなら、厄災の程度を弱めたり、贖罪の期間を短くすれば良いだけの話だ。そういう意味では、氷の領界の恵みの木は竜族を哀れんだ弟妹神の誰かが施した救済だったのだろう。
 神々が最終的に決めたこと。それが領界を繋ぐ可能性だったことに意味がある。
「カシャル。俺は全てを聞いても、竜族を今救いてぇ気持ちを変える気はねぇ」
 俺の言葉にフィナは小さく頷いた。
「まだ嵐と炎の領界が繋がっていない状況では、ナドラガ神は復活できません。しかし、ナドラガ神による救済、そう惑わせた邪悪なる意志によって邪神の復活は現実味を帯びています」
「その可能性は、とっくの昔に議論が尽くされたはずだ」
 円環の遺跡と聖塔を作り出した時点で、弟妹神は長兄の復活を覚悟していただろう。
 アストルティアの滅亡は、アストルティアを守護する神々にとって避けたい未来。それでも、弟妹神はその可能性を生み出した。なぜか。理由は一つしかない。
「神々はそのさらに先の可能性に、賭けているんじゃないか?」
 息を呑んだフィナに、俺は笑った。
「弟妹神が賭けた希望。俺が生きている限り、叶える為に力を尽くすと誓おう」
 俺を兄と慕ってくれた大切な半身。捧げられた親愛を俺は決して忘れることはない。
 ナドラガ神よ。そうあれかし。
 …もし、そうでなかったとしたら。
 ………。
 そうならない為に、俺は最善を尽くさなきゃならねぇ。