運命の鐘が鳴る

 オイラはそれを産声だと思ったプ。
 雄叫びには色々と意味がある。今からお前を倒すって闘志剥き出しの声もあれば、俺は強いと己に言い聞かせて奮い立たせる声もあるプ。でも、その声は何の感情を感じないプー。強いて言えば痛くて苦しいみたいな感情があって、それが生まれた赤ちゃんが最初に上げる産声に似ていたプ。
 でも、声の大きさも影響力も、赤ちゃんの産声なんて可愛らしいもんじゃないプ。
 鼓膜が破れそうな声は、オイラの愛らしい丸っこい顔面をフライパンで叩いて真っ平らにしてしまいそうな衝撃波を生み出した。衝撃波はめちゃめちゃのぐちゃぐちゃにした、ナドラグラムって場所の瓦礫をぐるぐると掻き取って迫ってくる。砂塵と父ちゃんのゲンコツくらいの瓦礫が混ざった衝撃波が、津波のように迫ってくるんだプ!
「全員、物陰に隠れろ!」
 テンレスは大声で仲間達に叫んで、ハナちゃんの帽子の中に何かを放り込んだプ。ハナちゃんは何かを口に入れたように頬をぷっくり膨らませて、次の瞬間鼻からぶしゅーっと真っ白い煙を吹き出した!
『プケーッ! 完成プッケ!』
 ぱかんと帽子が飛び上がると、帽子の中から綺麗な光が飛び出したプ。それはぱっと周囲に散って、蜂の巣みたいな六角形の光を連ねた壁になる。魔法の壁が張られたのを見たテンレスは、ハナちゃんの帽子を掴んでオイラが入ったツボを抱えて物陰に滑り込んだ。
 ガラガラごうごう、恐ろしい音がオイラを囲い込んで『お前をそこから引き摺り出してバキバキのべきゃべきゃにしてやる』って怖い声で言ってくるみたいだプー。ぐらぐらぶんぶん、世界が激しく揺れている。ハナちゃんが鼻水を撒き散らして悲鳴を上げる。いつもは『汚いプー!』って怒るけど、あんまりにも怖過ぎて鼻水も引っ込むプ。オイラとハナちゃんはテンレスの胸に抱きついて、がたがた震えるプー。
 テンレスもオイラ達を守ろうと、ぎゅっと抱きしめてくれたプー。顔を押し付けた胸から、ドンドンと叩くような心臓の鼓動と、じんわりと暖かさが伝わってくる。
 父ちゃん、助けて!
 オイラは目から涙が零れそうになりながら、世界で一番強い父ちゃんのことを考えたプ。大きくてどっしりとした父ちゃんは山みたいだから、こんな衝撃波なんかでよろけたりもしない。にやりと笑いながら『随分と心地よい風ではないか』ってカッコイイこと言っちゃうんだプ! 流石、偉大なる魔神族の戦士だプ! オイラの自慢の父ちゃんプッ!
 カッコイイ父ちゃんのことを考えていたら、怖いのも吹っ飛んで静かになったプー。テンレスはオイラを抱いたまま、そろりと腰を上げて物陰から顔を覗かせた。びくりと体が強張るテンレスの腕から、オイラも体を伸ばして見上げた。
 プッ! 息が詰まって、息をするのを忘れて、死んじゃうくらい苦しかったプ!
 その生き物は大きな廃墟をベッドにしそうなくらい大きい、オイラが見てきた生き物で唯一父ちゃんと競えるくらいの巨大な竜だ。黄金の鱗は油を浮かべたように黄緑色に移ろい、腹は真っ赤な血の色プ。巨大な翼は空を隠してしまう程に大きく、尻尾はこの廃墟があった空間に収まらずに虚空に垂れ下がる。灰色に濁った瞳がぎらりと赤く光った。
 一瞬見たそれを、オイラは恐ろしいものだと感じたプ。
 その生き物は激しい憎しみを世界中に向けて放っていた。全部をひっちゃかめっちゃか壊して、殺して、何も逃さないと迸る気配が言うんだプ。意味がわからなかったプ。全部壊して殺したら、どうやって生きていくんだプ?
 でも、この生き物は違うプ。オイラは全身の毛が逆立ちながら、目が離せなかった。
 父ちゃんと真逆の生き物だプー。
『ププケェッ…! あれが、ナドラガ!』
 帽子に包まってぶるぶると震えるハナちゃんから、皆が復活を阻止しようと頑張ってたナドラガって奴を見る。あんなに邪悪じゃ、生き返って欲しくはないプー。
「やはり、結界を重ねても心臓を抑え込むことは出来なかったか」
 すまない。ニコちゃん。悔しげに呟いたテンレスは、顎に手をやって考え込む。
「ルアムが神の器達を救出したと報告があったのに、なぜ、神々を降ろすことになったんだ?」
 もしや、ルアムの仲間達を人質に神々を降ろさせた? いや、シンイの予知で彼らは死ぬとされている。目の前で友人を傷つけ、神の器を追い込んだか…? テンレスが怖いことをぶつぶつと言うから、オイラは竜の方を向いたプー。
 金色の大きな体の周りを旋回するクロウズが、星のようだプー。
『我はこの世の全てを支配する者。この日を、どれだけ待ち望んだことか…!』
 それは声としては大き過ぎて、風の音のようにぼんやりした声だった。
 竜は軽く肘を曲げ、開いた手をゆっくりと握った。ぐっと握った手の周りで、ばちばちと黒い稲妻が弾ける。ちらりと灰色の瞳の中で瞬く赤が、シンイを乗せたクロウズを見遣った。
『我に歯向かう愚かなる存在が、我に触れることは許さぬ』
 ぱっと勢いよく手を開いただけ。迸った衝撃波がクロウズを薙ぎ払い、大地に突き刺さった。周囲の瓦礫がガラガラと崩れて土煙を上げる地面に、錐揉みになって銀色の竜が墜落する。
 プッ! ずしんとした衝撃を感じながら、そろりと蹄の隙間から外を見るプ。テンレスが『シンイ! クロウズ!』と叫びながら駆け出して、ハナちゃんが後を追いかけるのが見えたプ。瓦礫の上をぴょんぴょんと器用に飛び上がって登るハナちゃんを見上げながら、オイラは訊いたプ。
「ハナちゃんは、怖くないプー?」
 オイラは怖くて、とてもここから出られないプ。
 あのナドラガって竜を怖がってるオイラが情けなくって、涙が出るプ。オイラは偉大なる魔神族の戦士の子供だプ。誰よりも勇敢でなくちゃいけないって、誰よりもわかってる筈なのに…。
『ハナはテンレスお兄ちゃんのお役に立つ為に、いるんだプケ。ナドデモだかケドダガだか知らないプッけど、お兄ちゃんの役に立てない方が嫌プッケ!』
 たしたしっと軽やかにオイラの前に降り立ったハナちゃんは、ふすふすとオイラの毛皮の匂いを嗅ぐプ。はむっと腕を噛まれると、あんな小柄な豚の力とは思えない勢いで放り上げられたプー!
 ハナちゃん、ヒドイプゥゥウウウ!
『プオーンがべそべそ泣くと、集中できなくて大成功の確率が低下するプッケ! さっさと来るプッケ!』
 オイラは咄嗟にツボの蓋を閉めて体を丸くすると、ツボはがつんと地面に当たって、オイラの体もべちんてツボの内側に打ち付ける。プープー呻いている間に、ぶひぶひふごふご鼻息を響かせながら、ハナちゃんがゴロゴロとオイラのツボを突いて押すんだプー。
「僕は無事です。クロウズが庇ってくれたので…」
 シンイの声と、ざわざわ人の気配がするプー。そろりと蓋を開けると、だらりと地面に体を横たえる銀色の竜が見えたプ。ぴくりとも動かない竜の背の向こうから、ほっと息を吐いたテンレスが顔を上げた。
「上手く受け身の姿勢をとれたようだ。気を失っているが、怪我はなさそうだな」
 言葉を聞いたシンイは大きな怪我もなさそうで、『良かった』と優しい顔で竜の首筋を撫でる。小さく息を吐くと優しい顔は消えて、険しい表情が聳り立つナドラガを見上げた。
「これが、神…。近づく事すら叶わぬとは…」
 もう瓦礫の山になってしまったナドラグラムから、巨大な竜に向かって風が吹く。いや、風が竜に向かっているんじゃなくて、大きく息を吸い込んだ空気の流れが風のように動いているんだプ。仰け反ってはち切れんばかりに膨らんだ腹が赤々と輝き出し、空気の中を漂っていた埃が燃え出した。むわっと感じた空気は、あっという間にちりちりとオイラの毛皮を焼き出すプ。あちあちプ!
 大きく口を開けると、口の中から白い輝きが空に向かって放たれる。空をぐるぐる回っていた黒い雲が真っ白に照らし出されて、オイラ達の影まで消されてしまうプ。勢いよくお腹を折って前のめりになると、竜は勢いよく灼熱を吐き出した。蒸発しそうな熱を持った太陽のような眩しい光は、ナドラグラムの空気を貫通し輪のような軌跡を刻む。光が輪をいくつも貫いた先で、ぴしっと音が響いたプ。
『さぁ、我に救いを乞うが良い。捧げるべき祈りは我にあり…!』
 硝子を割ったような澄んだ音が響き渡ると、暗闇がひび割れた。ぱらぱらと破れていく先には、真っ青な青空が広がっている。
「あれは、まさか。アストルティアの空…?」
 シンイが身を乗り出して、真っ青な顔を青空へ向ける。
「ナドラガめ! アストルティアへ攻め込むつもりか!」
 竜が大きく翼を広げる音がごうっと響くと、翼に押された空気で軽い石がばらばらと舞い上がる。誰もが腕を上げて飛んでくる石から身を守っていたけど、竜が大地を蹴って舞い上がった地震に足を取られて倒れ込む。空高く舞い上がった体がぐんと急降下し、地上スレスレで勢いづいた体が割れ目に向かう。大き過ぎてとてもゆっくりだったけれど、それを止めることは誰にも出来ない。
 悠々とアストルティアへ向かう竜を眺めるしかないテンレスは、歯を食いしばって強く拳を握りしめたプー。
「あんなのと、どうやって戦えっていうんだ…?」
 にたりと笑った竜は、ずらりと並んだ牙の間から青い舌が嬉しそうにゆらめく。これから竜がアストルティアで何をするのか、それを見ただけで分かったプ。
『愚かなる者共に、神に平伏す喜びを教えてやろうぞ!』
 オイラはぶるぶる震えていたのが、怖いものから、怒っているものに変わっているって気がついたプ。
 父ちゃんは大きくて強い。アストルティアを我が物顔で行き来する連中の住処を歩くだけで、国も軍隊も全部滅ぼしてしまうプ。『どうして、そうしないプー?』って訊いたことがあった。
 『虫けらを潰すことなど、いつでもできる』そう言うけど、したことはない。
 父ちゃんは弱い者を意味もなく虐めたりしないし、皆がひっそりと寝静まって見ていない時に動く。父ちゃんはアストルティアの小さい生き物達を、驚かせたり怖がらせたりしないように生きている。それがどんなに大変か、どんなに気を遣っているか、オイラは誰よりも近くで見てきたつもりだプ。
 オイラとテンレスの出会いは、父ちゃんがお腹を痛めた時だったプー。
 父ちゃんはとっても大きいから、悪い魔物を食べてしまったりしてお腹を壊すことがあるプ。オイラが父ちゃんを苦しめる悪い奴を、やっつけてやるんだってこっそりお腹の中に入ったんだプー。お腹の中は父ちゃんを苦しめる悪いやつでいっぱいプ。
 魔神族の戦士の息子プオーンが、お前達を成敗してやるプッ!ってやる気満々だったプー。
 でも悪い奴はいっぱい増えていくプ。瞬き一つしたら増えて、くしゃみをひとつしたら増えて、鼻水啜ったら増えて、気がついたらツボに隠れていないと押しつぶされてしまうほどに増えていたプー。
 もうダメだプー。ぴしぴしみしみしツボが音を立ててヒビが入ってしまいそうな時、悪い奴らが悲鳴を上げてあっという間に消えていったプ。テンレスが錬金した胃薬が、父ちゃんのお腹で悪さをしていた奴らを一掃したんだプ。
 オイラはそんなテンレスの強さに感動して、修行の旅としてついていくと決めたプ。父ちゃんは可愛い子こそモンスターマスターと旅をするべきと、許してくれたプ。テンレスを信用じて、オイラを託した。父ちゃんは心と度胸も、腕っ節と同じくらい強いんだプー。
 それなのに平伏す喜びを教えてやるって、なにプッ! すごく偉そうで、オイラはプンプンが収まらないプ!
「強き者はその力を誰にも見せなくても、弱い者を守れるんだプー! 弱き者が強い者に従うのは、暴力が怖いからじゃないプ! 強き者が弱き者を信じてやる、器の大きさに惚れるからプ!」
 大きな音が響き渡ってるのに、竜にオイラの言葉が届いたんだろう。ぎろりと怖い視線が向いたけど、構わないプ! オイラは大きく息を吸って、丸いお腹を限界まで膨らませる。一番言いたいことを、腹の底から大声で言い放った!
「お前みたいな奴に、父ちゃんは絶対負けないプー!」
 オイラを見た竜の横顔に、割れ目から出た巨大な右ストレートが突き刺さったプ!
 あのオリハルコンより硬く、真っ暗な夜の漆黒に輝く蹄。毛皮でも隠しきれない盛り上がった上腕二頭筋。そして積み重ねた歴史を彷彿とさせる瑞々しい苔! 世界一強くて優しい腕だプ!
「聞こえたぞ、トカゲ」
 蹄を割れ目に掛け、のそりと覗き込んだ鼻が星空のように瞬く。
 バランスを崩してナドラグラムの地面に墜落した竜に向かって、巨大な体が割れ目をさらに広げながらナドラガンドに入ってくる。たくましく盛り上がった肩甲骨の後ろの翼を折りたたみ、その大きな体と落下する力を加えた一撃が竜に叩き込まれるプ。その衝撃はナドラグラムだけじゃなくて、空に浮かぶ領界すらも震わせる!
 蹄を打合せた音がナドラガの威圧に飲まれた空気を吹き払った。にやりと竜に向かって言う。
「誰が誰に平伏すのだ?」
 父ちゃん! カッコイイ!
 竜は頭を振って起き上がると、すっと素早く息を吸い込む。一瞬にして竜に吸い込まれて強風となった空気が、凪いで父ちゃんの毛皮をちりちりと焦がす。大きく開いた竜の口から放たれる真っ赤な光に、父ちゃんの巨体が夕焼けに照らし出されたように染まった。
 至近距離で灼熱の炎を浴びせようとする竜に、父ちゃんは慌てたりしないプ。三つの目を冷静に細めると、蹄を組んでぐっと両腕を振りかぶり竜の頭の上に振り下ろしたプ! 竜が頭に浮けた衝撃が体を突き抜け、大地を踏み締めた足元から走った大きなヒビがナドラグラムを駆ける。びりびりと大地が揺れて、脆い地盤ががらがら崩れていく。
 父ちゃんが決めた会心の一撃に、オイラは歓声を上げたプ!
「ププケェ! プオーンの父ちゃんが城より大きくて山を一撃で粉々にするって、嘘じゃなかったプッケ!」
 驚いたハナちゃんが腰を抜かして、手足をバタバタさせるプ。
 ププー! オイラの父ちゃんは世界一強い魔神族プー! 誇り高き魔神族の戦士は、嘘なんて姑息な真似はしないプー!
 全力で戦う父ちゃんの姿がカッコ良過ぎて、鼻が伸びて昇天の梯の先まで届きそうプー。
 どうにか踏み留まった竜は、まだ吐き出す炎を腹の中に溜めていた。父ちゃんの一撃に下がった頭を上げ、脇腹に灼熱の炎を浴びせようと再び口を開く。父ちゃんの組んで振り下ろした蹄を解き、足でしっかり大地を踏み締めて下から顎を殴り上げたプ! それでも炎を飲み込まない竜の頭を大地に叩きつけ、まだ父ちゃんに向けようとする頭を上から押さえつける。
 堪えきれなくなったのか、竜の口から迸った灼熱の火炎がナドラグラムを貫いたプ! 赤く輝く光が大地を貫き瓦礫を溶かし、瞬く間に溶岩の海に変えてしまう。
 竜は両手足に地面をつけて、頭を押さえつける父ちゃんの蹄を跳ね除ける。そのまま上半身を捻って、大きく振り回した尾を父ちゃんの頭に叩きつけた。尻尾の先は鉄球を付けたように丸くなっていて、振り回した力が乗りやすいんだ。流石の父ちゃんも堪えきれずに、上半身がぐらついてしまう。
「父ちゃん、がんばれ!」
 応援するオイラの目の前で、竜は父ちゃんの胸に頭を押し付けるように踏み込み顎をかち上げる! 痛そうプッ! 竜のトゲトゲしい突起がいっぱい付いた頭が顎に突き刺さり、父ちゃんは溜まらずよろめいて後ずさる。
 竜は頭を低くしたまま突撃するけど、踏み替えた足で踏ん張った父ちゃんが迎え撃つ。互いの手がぶつかり衝撃波が走る中、父ちゃんと竜ががっぷり組み合う。
 竜が『魔神族か…』と呟いた。
『頭を垂れよ、獣』
 巨大な竜の囁きがこの場の全ての生き物に降りかかる。
 ずらりと並んだ鋭い牙を眺めて、父ちゃんは余裕の笑みを浮かべるプ。父ちゃんも食らったらタダじゃすまない強力な炎だけれど、隙が大きくて攻撃されちゃうって竜は分かったんだプ。こんな組み合った状態でも炎を吐かない竜の言葉は、負け惜しみプ!
「息子が負けぬと言った。尻尾を巻くのはトカゲ、貴様の方だ」
 そうだプー! 大人しく逃げちゃえば良いプー! 父ちゃんは優しいから、逃げる者を追いかけて殺したりなんかしないプー!
 父ちゃんと竜がぱっと手を離せば、互いの体に会心の一撃を叩き込み合う。『父ちゃん、尻尾がくるプー!』とか『父ちゃん、カッコイイプー!』って応援が忙しいプ。落雷が目の前で落ちるような音が響く戦いを眺めていたテンレスが、はっと顔を上げる。
「プオーンの父ちゃんが時間を稼いでくれている間に、勝機を見出さないと…!」
「父ちゃんは負けないプー!」
 ぷっくり膨らんだオイラの頬を、テンレスは指で突いた。膝をついて視線を合わせると、にこりと笑う。
「プオーンの父ちゃんが負けないのは、俺だって分かってるよ。でもな、ナドラガを止めるのはプオーンの父ちゃんじゃなくて、弟妹神の子供である俺達がやるべきなんだ」
 プオーンの父ちゃんは、別にナドラガと因縁がある訳じゃないだろう? そう言われてしまえば、頷くしかないプー。テンレスはオイラから視線を外すと、ナドラグラムの端っこに突き立っていたキラキラに輝く剣を見た。
「あの剣で神代の時代のナドラガは倒された、と見るべきだな。あの剣を調べれば、ナドラガを倒す方法が見つかるかもしれない」
 行こう! 皆の顔を見回すテンレスは、竜に手も足も出なくって悔しそうな情けない顔じゃないプ。絶望して立ち尽くしていたシンイも、ひっくり返っていたハナちゃんも、見つけた希望に目が輝いているプ。
 皆が希望を持てるのも、父ちゃんのお陰だプー!
 オイラの自慢の父ちゃんは、世界一プッ!