村の夕べ

 この村にはオリガさんという名前の少女がいました。
 村一番の腕と言われる漁師と、村一番器量が良い娘の間に生まれた女の子。空から雪が降る程に寒い日が続いた年、幼いオリガさんと愛しい父を残し母は亡くなったそうです。それ以来、漁に出る父を見送り実質的な独り暮らしを重ねていました。親の苦労を知っているのか、決して我が儘の言わない健気な子だったそうです。
 彼女が漁師の船に乗せてもらえる年齢に達した歳、オリガさんの父が漁から帰って来なくなったのでした。
 どんなに遠くに漁に出ても一週間も経たずに帰って来る父を、オリガさんは祈るような気持ちで毎日海辺に立って待ち続けました。父が漁で使う網を直し、帆布の解れを繕いながら彼女は待ち続けます。村の漁師達も村一番の漁師だったからこそ信じたくも無かったが、海の荒波の恵みと厳しさを知る故に説得する様に一人の男の死を告げ始めました。オリガさんは受け入れませんでした。彼女は父の死に只管首を横に振っては海を見つめていたのです。
 村人達は心の底から同情しました。教会の神父は毎日神にオリガさんの父が帰還するよう祈りを捧げ、海女を営む女達は村の近くの海辺の底にある守護天使の像に詣でました。陸で漁の道具を整備する老人達は彼女の心を労る様に、丁寧に材料になり得ない小さい木片を磨いで鳥を模したり、くたびれた帆布をばらした糸を繊細に織ってレースにして贈ったりもしたそうです。オリガさん程の年齢に達しない幼子を持つ母親は、オリガさんの姿を不憫に想い毎日の様に食事を裾分けに行きました。村人達の気心をオリガさんは心の底から感謝し、父を待つ以外は海辺で海苔や貝を穫ったりして感謝の言葉を添えて返していました。
 漁師達は出来る限り遠くの漁場に向かい、知る限りの漁村を訪ね無人島も立ち寄っては捜索していました。オリガさんも寄港した漁師達に父が打ち寄せられていないかを訪ねて歩きます。ツォの漁師達はそれぞれの家に先祖代々に伝わる漁の守りを持っていて、それを命の次に大切にしています。それは遥か昔の鮫の歯や珊瑚の欠片や真珠と海にちなんだものです。例え漁師達の想像通りの結果であっても、父とその遥か昔の祖先との繋がりをオリガさんの手に渡してあげたい。漁師達だからこそ理解出来る切なる願いでした。
 彼女が待ち続けて2ヶ月が経ちました。
 オリガさんは徐々に父の死を受け入れていましたが、最後であり唯一の肉親の死を信じたくはありませんでした。オリガさんと歳が近い村長の息子トトが、静かに村長の家の養子にならないかと声を掛けました。村で天涯孤独となった子供を養えるのは村長の家だけで、オリガさんはそれがいずれ自分が選択するだろう道だろうと漠然と思っているようでした。
 3ヶ月が経ち母の命日が来た日、オリガさんは決心しました。目に涙を浮かべ、何処かの海の底で死した父に別れを告げようと海に入り祈りました。
 アユルダーマ島の南に面したツォ村から臨む海に、横たわるものはありません。只管に広い美しい海と空が広がっていて、時に渡り鳥の列と船が遠くに見えるばかり。太陽と月が差し込む光に煌めく海は、まるで真珠を砕いてばらまいた様に美しかったのです。父が眠っているだろう海の向こうからゆっくりと大きな波が寄せてきました。波は徐々に黒くなり大きくなり、オリガさんが気が付いて腰を上げた時には目の前に見た事のない巨大な魚の影があったのです。
 高台に住んでいた村人は、村の集落よりも広い砂幅に匹敵する巨大な魚影を見ました。尾は村の教会よりも広く、村で最も大きな船の倍はある背には鍋の蓋よりも大きいだろう立派な鱗が陽光に煌めきました。村の何処からか主様と声が上がります。老人達が幼い時に巫女が死して以来現れる事のなかった巨大な生き神の事だったのですが、信じていない若者でさえ否定して銛を向ける者はいませんでした。
 神々しい巨大な魚は村の前の海辺を何度か悠々と泳ぐと、その巨大な尾を村に向けて振り上げました。波飛沫が豪雨の様に村に押し寄せ、沢山の魚も宙に舞き上げられます。村人達にも容赦なく飛沫が押し寄せ、彼等の簡素な家の木の壁を激しく叩く音が響き渡ります。音が止み異常な程の静寂が訪れた時、村人達は一様に驚きました。村のあちこちに魚が打ち上げられ、その量は村人達が数日は食いつないで行ける量だったのです。
 翌日も、その翌日も、オリガさんは別れを告げに海に出ると巨大な魚が現れて魚を打ち上げる様になりました。
 そして…
 何時の間にか、オリガさんは"ヌシサマ"の巫女となっていたのでした。
「馬鹿じゃないの?」
 ヴィータさんの痛烈な一言が村長の家に響き渡ると、先程までの啜り泣きが潮が引いて行く様に静まり返ってしまいました。私が思わず青くなってヴィータさんを見れば、彼女は悪びれた様子も無く深紅の瞳で集まった村人達を一人一人見ています。人は呆れを通り越し本当に嫌な物を直視しなければならない時に、顔が歪むそうですが舞台役者のような表現力です。
 私やヴィータさんは村長の家の窓際に座っていました。ここに一同に会している村人や私達は、オリガさんを最後に見た人達でした。
「貴方達、何に泣いてるの? 哀れな幼な子の為に泣いてんじゃないんでしょ? 汚らわしい涙なんか見せないでくれる?」
 何故、この人は名前が覚えられないのでしょう。誰だか分かれば良いのでしょうね。
「なんだと…!」
 屈強な漁師だろう筋肉隆々な男性が思わず反論したけれど、ヴィータさんに掴み掛かろうとはしませんでした。ヴィータさんの冷たい眼差しに射すくめられ、まるで罪を暴かれた様に顔を顰め踞って床に座り込んでしまいました。
 彼は筋肉の盛り上がった腕を持っていましたが、その体を包む服は少し余っています。他の漁師らしき男も同様に筋肉の衰えが見られ、女性はふくよかな体つきになって衣類がキツそうになっています。
 "ヌシサマ"が現れる様になって半年経ちました。オリガさんは毎日の様に海辺に立ち"ヌシサマ"に御祈りして、魚を打ち上げてもらっていました。私達がこの村に着いた時も丁度その時でしたが、"ヌシサマ"が打ち上げた魚は村人達が嬉しそうに拾っていました。人々は漁をしなくなり、この村特産だった魚介類の乾物も作らなくなってしまいました。もう、村人は働かなくても生きていける様になってしまったのです。
 豊かになって人々はもっと贅沢したくなりました。無い物はなんだろうと見回して、お金が足り無いとでも思ったのでしょう。村長を始め狡賢い大人達は"ヌシサマ"にこう頼めとオリガさんに言ったそうです。海底の財宝を探して恵んで下さいと。
 そして欲深い村人を罰するかの様にオリガさんは現れた"ヌシサマ"に食べられてしまったのです。
 ヴィータさんの言葉は酷いと思いましたが、彼等が明日から働かなくてはいけない贅沢が出来ない事を悲しんで、オリガさんの死を悼んでいないのなら私もそんな涙は見たくありませんでした。そして、そのまま認める様に座り込み黙ってしまう村人達を見て切なくなります。こんな人達の為に、オリガさんは利用されにされて食われてしまったんだなんて…。
「貴方達本当に最低ね。反論も満足に出来ないの?」
 ヴィータさんはそのまま村人を見下ろしたまま、諭す様にゆっくりと、鋭い刃物のように現実を言葉にし始めました。
「生き物は労働をしなければ生きていけないわ。空腹なら狩りをして、喉が渇けば水を求める。それは立派な労働。花が咲き蜜を虫や鳥に提供するのも自分達ではできない受粉を手助けしてもらうため。これも立派な需要と供給。で、貴方達は? 労働してる?」
 そこで首を傾げて村人達の返事を促すも、静かに波の打ち寄せる音が聞こえるばかり。ヴィータさんも返答を毛頭も待っていなかったのか、気に留める事なく『してないわよねー』と語気を明るめにして言い放った。口調が明るい分突き刺さります。
「ただ"ヌシサマ"に食い物恵んで下さいって幼な子に頼んで、労働もなにもしないで生きていける。今度は金がないから持って来て下さい? 貴方達に理解出来るか分からないけど、怠惰極まり無いわ。生き物は労働しなければ生きていけないの。労働をしない者は生きてないのと同じなの」
 あたし達のこんな暮らし…やっぱり間違ってますよね?
 私達を泊めてくれたオリガさんは、旅人の私達に訪ねたのです。最初は皆こんな生き方を疑問に思っていたのかもしれませんが、最終的に村人達は変な方向に向かってしまったのでしょう。オリガさんは"ヌシサマ"を利用するのは止めようと村人達を説得しても、最終的には脅迫の様に"ヌシサマ"を利用する事を強いたのです。ヴィータさんが村人達に浴びせている厳しい言葉は、オリガさんが言えなかった事もきっと含まれているのでしょう。
 ヴィータさんの言葉に数人の人間が凄みの利いた視線を向けました。その反応に目を輝かせ挑む様に睨み返すと、ヴィータさんは朗々と響く声で言いました。
「私の言ってる事が間違ってるかしら? 村の人間が1人欠けたくらいで生活が揺らがないなら、貴方達が正しいんでしょうけど違うんでしょ? 昨日と同じ生活をしてたら死んじゃうんじゃないの?」
 今まで"ヌシサマ"のお陰で行われていた漁が再会されるでしょう。
 この村の特産品である海産物の乾物の販売も始まるのです。私はこの村に乾物を買い付けに来たので、販売が始まる事はとても嬉しいはずなのです。
「オリガは…ヌシサマに愛されておったのだ…」
 項垂れた村長が呻く様に言いました。
 自分達の行いを僅かでも肯定したい想いは、ヴィータさんが容赦なく叩き潰しました。
「だから? 愛情の対象でもない貴方達が横から好きに利用して良いって訳? …耳腐るから止めてくれない?」
 何かが切れたかの様に、村人の一人が泣き出しました。嗚咽に呼応する様に次々と感情が露になり、まるで家の中を大波が掻き回しているようなうねりを持ち始めました。不甲斐ない自分を責める声、お前もオリガさんを利用していただろうという罪の擦り合い、オリガさんもその父もいない状態での漁獲量で生活して行かなければいけない憂い。しかし、そのうねりは一つの方向を持っていました。ヴィータさんへの怒りなのでしょう。村人達の目が、恐ろしいものになってきました。
『うわぁ。アインツ、ヴィータ姐さんの毒舌ヤバ過ぎだって』
 ヴィータさんの毒舌の凄さに一言も出ず見守っていたサンディが、私の背中に縋り付いて言います。
 突然、男が立ち上がり壁に立てかけてあった銛を掴みました。
「余所者が…! この村から出て行け!」
 その声を皮切りにその場に集まった人々が出て行けと叫び出しました。私達を打ち据える様に反響し、木の家を突き抜け揺るがします。がたがたと次々と村人が立ち上がり、床が地震の様に揺れ始めます。むくむくと沸き上がるどす黒い悪意に、私は思わず冷や汗が吹き出します。
『ホントの事言われて逆ギレしてるし、ウザッ! ねぇねぇ、サクッと逃げちゃったほーが良く無い?』
「賛成よ、妖精ちゃん。収集がつかないものね」
 誰のせいですか。
 突っ込む間もなく一番に家から飛び出して行くヴィータさんを追いかけ、私とサンディも扉を抜けて外へ飛び出します。半月よりも更に欠けた月でもヴィータさんの色白い肌が浮き上がり、いきなり飛び出した夜の世界でも彼女を見失う事はありません。砂を蹴っていくつもの帆船の影を縫って、村を外の魔物から護る為に丸太で出来た壁が見えてきます。
 もう少しで村から出られそうです。これから北上を考えても宿場町へはたどり着けないでしょうし、今日ばかりは野宿は仕方ない事でしょう。
 私がそんな事を考えて走っていると、ヴィータさんに追いつきました。笑顔でさっさと行きましょうと言うのかと思ったら、神妙な顔で村を振り返っていました。
「どうしました?」
「このまま、出てっちゃって良いかしらね…って」
 私とサンディが思わず顔を見合わせました。このまま村に留まって、あの怒り心頭の村人に会ったらどうなる事か。旅慣れている私達が倒されるなんて事はないでしょうけど、逆に私達が彼等を傷つけてしまわないかと不安になります。
 ヴィータさんはあれだけ罵詈雑言浴びせても足り無いとでも言うのでしょうか?
「旅人さん」
 まだ声変わりしていない高い少年の声に振り返ると、教会の建物の影に隠れる様にトトという少年が手招いていました。トトは村長の息子でしたが、血相を変えた村長に連れて行かれたオリガさんの身を護って欲しいと私達に頼んで来た少年でした。彼は村の裏手にある鬱蒼とした木々に隠れながら、私達を村と海が一望出来る高台へ案内してくれました。
 見下ろした村は静かなままで、私達を追って探している村人の姿は見えません。村長の家も他の村人達の家も、窓から僅かな灯火の光が覗くだけで人の動く様子も声も聞こえません。海の打ち寄せる音が規則正しく響き、月の光が世界を照らし、人々の生活が少しの事で壊れてしまう脆い物だと告げるようでした。
 トトは私達に振り返ると、消え入りそうな声で言いました。
「オリガさんの事…聞きました」
 そこには悲しみも落胆もなく、ただ事実を告げる様に言いました。私達も黙ってその言葉を聞きました。きっと村人がトトに伝えた事は、私達がトトに伝えられる事とそんなに変わらないだろうと思うからです。
 静寂が痛くなり波音だけが優しく響くのが辛くなって来た頃、ヴィータさんが何気なく言い放ちました。
「あの幼な子は死んでないと思うわ」
 その言葉にその場に居た誰もがヴィータさんを見ました。驚きと疑問に満ちた視線の中で、ヴィータさんは動じる事無く言葉を続けました。
「あの"ヌシサマ"がどれくらい人間の事を見分けられるか分からないけど、少なくとも完全に幼な子と他の人間の区別は出来ているわ。意図は種族が違うから人間の基準で量るのは難しいけど、あの"ヌシサマ"は自分の食べ物を幼な子に分け与えているという時点で敵意や悪意はないわね。でも安心はしてはいけないわ。どんな知性ある生命も激情に流される事があるから、全く安否は保証出来ない」
 私達に希望を抱かせたりへし折ったりしながらも、ヴィータさんは『仮に死んでないとしましょう』と淡々と言いました。
「村に帰るには一つの条件があるでしょうね」
 ヴィータさんが真っ直ぐトトを見下ろし、大切な事を伝えるようにゆっくりと言いました。
「村があの幼な子と"ヌシサマ"に頼らない、自立したかつての姿を取り戻す事。そうしなければ例え生還しても村には居られないわ」
 もし、村人達の中にオリガさんの力に頼る気持ちが欠片でも残っていれば、彼女が生還しても同じ事を繰り返すのでしょう。例え同じ事を繰り返さないとしても、そのような目で見られていれば居心地は悪く村から出て行ってしまう事もあるのです。彼女がオリガさんという一人の少女であるという事を認め、ヌシサマの巫女だったという過去から誰かが護ってあげなくてはならないのです。
 ヴィータさんはその役割をトトに求めているのでしょう。
 オリガさんが村人達に連れて行かれる時、その目に宿った瞳に狂おしさに気が付いたトト。あの時は旅人である私達が居たから助けを求める事が出来ましたが、これからは旅人が居るとは限らないでしょう。それはこの村に住んでいる彼自身が良く分かっているのです。トトはこれからオリガさんを護る為に強くならなければならないのでしょう。
「僕…オリガさんを護ります」
「貴方も非力な幼な子…簡単な事じゃないわ」
 ヴィータさんの言葉が神秘的な響きを伴ってトトに届きました。
 神妙な顔つきでトトは深く頷いたのです。決意を固めた横顔は幼いながらに月光に照らされて美しく感じました。その横顔を頼もし気に見ながら、私はそっと彼の横に歩み寄りました。
「トトさん、申し訳ありませんでした」
 私が謝るとトトも苦笑して頭を下げました。
「僕達の方が謝らなきゃ。旅人さん、ありがとう。どうか、この村を嫌いにならないで下さい」
 嫌いにならないで…か。
 名残惜しそうに村に戻る為に坂を下るトトを見送ると、サンディが面倒そうに私の肩に肘を掛けました。
『アインツ、謝る必要なんてないんですケド。あたしたち、あのトトって子に頼まれてオリガさんの所に行ったケド、結構どうしようも出来ない感じだったじゃん。さっきの騒ぎだってヴィータ姐さんが焚き付けて、村人達が勝手に逆ギレしただけだしぃ』
「サンディが言った事、全部込みで謝ったんです」
 私の言葉に素早く反応したのはヴィータさんでした。彼女は心外と言いたげに私に言いました。
「あら、私は間違った事を何一つ言った覚えは無いわよ」
 サンディですら疑わし気にヴィータさんの顔を見ました。
 正論であってももう少し言葉を選んで欲しかったのですが、ヴィータさんの性格を考えると遠慮とか気遣いがすっぱり抜けているんだと思ってしまいます。結局村人を怒らせてしまった事実はありましたが、後悔ばかりして現実から目を逸らされては彼等の為にはなりません。
 私もヴィータさんの顔を見て、諭す様に言いました。
「確かに私達に非は一切ないです。でも村長さんもヴィータさんも誰も謝らないじゃないですか。誰かが謝らないといけないから私が謝ったんです」
『アインツ、難しいんですケド』
 サンディがげんなりとした様子で言いました。その横でヴィータさんが感心した様に笑っています。
「天使ちゃんは私の知る中で最も天使に相応しい子ね」
 その言葉使いは変です。私は思わずヴィータさんを見上げました。
 今ではすっかり天使を見分ける力を失っているらしく、どの町でも守護天使に会うことはできません。師匠も探しにきてくださないのか、来ても気がつかないのかわかりません。でも、もう、私は天使ではないのでしょう。そう思っていました。しかし、ヴィータさんは天使だという。一体、どういう根拠からなのでしょう?
「貴女は私が天使だと、本気で思っていらっしゃるんですか?」
 私が首を傾げて訊ねれば、ヴィータさんも何を今更と言いたげに片方の眉を跳ね上げて苦笑しました。
「呼び名なんて私が呼んでいると相手が分かれば良いし、その意味を相手に伝える必要も無いわ」
 ヴィータさんは特に悪気も関心も無く村から背を向けて歩き出しました。きっとトトさんにオリガさんの事を伝えておきたかったようで、この村にはもう用は無いと言いたげです。でも、そんな態度でもオリガさんの為に動いてくれたのだと思うと、悪い人では無いのだろうと思ってしまいます。
 サンディもぶつぶつと疲れた怠いと肩に乗っていて、村の事を気に留めたりしていません。
 私はもう一度、村を振り返りました。
 今は夜に微睡み眠っているように静まり返っています。でも、日は昇り明日が来る事でしょう。
 決して待ってはくれません。